研究課題/領域番号 |
25420612
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
木下 進一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70263209)
|
研究分担者 |
吉田 篤正 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60174918)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 熱環境 / 屋外熱環境制御 / ヒートアイランド / 植物熱収支 / ふく射伝熱解析 / 葉群熱・水分輸送モデル / 熱環境改善ユニット |
研究概要 |
植物個体を熱交換ユニットとみなした場合に,植物葉群が機構的に有していると思われる高効率でかつ環境変化に対して自律的に対応が可能である特徴に着目し,その要素を抽出し都市における熱環境改善のための人工ユニットの開発を目的とする.植物の個々の葉面および葉群での熱収支から表面熱伝達率,物質伝達率を系統的に測定し,熱および物質交換機能を定量的に把握し,その支配要因を抽出する.屋外空間における植物葉群を対象とした熱収支シミュレーションを援用しつつ,それらの要因を考慮に入れた熱交換ユニットを試作し,性能評価を行う. 平成25年度は物形状データに基づく植物熱収支評価シミュレーションプログラムの作成を行い,それを用いた数値解析による結果と実測との比較により,シミュレーションの精度について検討した.シミュレーションでは樹木成長シミュレーター(AMAP)により得られるポリゴンデータを植物の形状データとして応用し,個葉における直達日射の吸収・反射・透過ならびに蒸散量,熱伝達量を計算できるようにした.蒸散モデルのパラメータは,実際の植物の葉からの蒸散量をリーフポロメータにより測定したデータを用いて同定している.対象植物として樹木をクスノキ,イチョウ,短木としてハイビスカスを用い,それぞれの熱収支評価を行った.ハイビスカスについて解析結果との比較を行っているが,正味ふく射量,潜熱輸送量共に差が大きく,それぞれでの葉面積指数(LAI)の違いが影響して,数値解析の値が小さく評価されたと考えられる.クスノキ,イチョウの熱収支数値解析については,正味ふく射量と潜熱輸送量とがほぼ同じ値となり,透過光の散乱を考慮していないことが原因として挙げられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
植物熱収支を評価するための基本プログラムは作成できており,日射に関しては直達光の影響について評価できるようになっている.実際の植物の熱収支評価と解析との比較を行っており,解析精度の検討を行っているところであるが,植物に入射する拡散光の影響,樹冠内での散乱光・赤外ふく射の影響について評価できていないことで,十分な精度が実現できていない. 植物の蒸散速度に及ぼす葉のつき方・方向などの影響についても樹種の違いを含めてより多くのデータを取り系統的に評価する必要がある.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降はシミュレーションについては,(1)樹冠内外の拡散光およびふく射の影響を考慮できるようにすること,(2)葉温を葉面での熱収支に基づいて決定できるようにすることにより,解析精度の向上を図る.一方,実際の植物についても蒸散速度に及ぼす諸因子の影響について系統的に評価し,解析のモデルパラメータを決定する. これと並行して小規模な葉群のレプリカを対象とした小型風洞実験を行い,葉のサイズ,配置,揺らぎ等の諸条件が熱伝達特性に及ぼす影響について評価し,さらにこの葉群レプリカに対して水分を供給できるよう改造し,水分蒸発を含めた熱・水分伝達特性を小型風洞において評価する.こうして得られた知見を基に葉群の熱・水分移動特性モデルを構築し,それに基づく熱環境改善ユニットの作成ならびにその性能評価を行う.
|