研究課題/領域番号 |
25420615
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松田 礼 日本大学, 理工学部, 准教授 (30469580)
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研究分担者 |
町田 信夫 日本大学, 理工学部, 教授 (30060164)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低周波音 / 精神作業 / 心理生理反応 / 振幅変調 / 自律神経 |
研究概要 |
本研究では,時間的に音圧レベルが変動する変動性低周波音を対象として,感覚閾値以上のレベルを人体に暴露した場合の生理・心理的影響と作業効率に与える影響について実験的に検討した.実験に用いた変動性低周波音は純音を構成する周波数をキャリアとし,これを振幅変調させて電圧信号を発振器に入力し,低周波音用チャンバ内で発生させている. 生理反応の評価指標として,自律神経の活動度を表すLF/HFを測定した.これは,心電図から心拍数(R-R 間隔)を基準として算出した心拍間隔変動スペクトルのゆらぎを周波数解析して得られる.実験の結果,ほぼ全ての条件で安静時よりも暴露時のLF/HFが高くなったことから,変動性低周波音の暴露によって交感神経が優位に働き,被験者はストレスを感じていることが分かった. 心理反応測定は心理学的手法を用いたアンケートによってアノイアンス(不快感)を測定した.アンケートは「感じない:1」から「非常に感じる:5」の5段階評定としてアノイアンスの大きさを求めた.その結果,キャリア周波数が31.5Hzの変動性低周波音を暴露すると,他の条件(16Hz,63Hz)に比べてアノイアンスを強く感じる傾向がみられた.ただし,変動性低周波音の変動周期や変調度の違いによるアノイアンスの差はほとんどみられなかった. 次に,変動性低周波音を暴露しながら精神作業を行い,作業効率に及ぼす影響を調べた結果について述べる.実施した精神作業は内田クレペリン方式の1桁の単純連続暗算を行う加算作業と,PCに表示された上段の数字から下段の数字が何種類あるかを回答する検索作業の2種類である.作業効率を評価する指標として回答数と正解率を評価した結果,変動性低周波音を暴露しない状態と比較すると回答数の増減はほとんどみられなかったが,正解率は変動周期が短いと低下する傾向がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は計画通り,生理反応測定による変動性低周波音の自律神経への影響と変動性低周波音が作業効率に及ぼす影響の2点を検証するための実験を行った.生理反応は心電図,唾液アミラーゼを測定し,変動性低周波音暴露による自律神経への影響調査結果から,ストレッサーとしての可能性が示唆された.心理反応はアノイアンスの影響について心理学的アンケートにより検証を行ったが,変動性低周波音の変動周期や変調度による感じ方の違いについて明らかにするには至っていない.また,精神作業への影響については,変動性低周波音を暴露することにより回答数と正解率は減少する傾向は認められたが,統計学的手法を用いたより詳細な検証が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は初年度までの研究内容を継続して進める.脳波測定は予備実験が終了した段階のため,来年度以降にフリッカー値測定も加えて作業効率への影響を検証する.また,実際の風力発電施設の風車から発生する変動性低周波音を測定・解析し,これを低周波音用チャンバで再生させて作業を行う実験を実施する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
多チャンネル生理計測装置と脳波計ヘッドセットの購入金額が予定の設備備品費よりも安価となったこと,国内旅費の支出額が予定よりも少なかったことにより次年度使用額が生じた. 学会の発表件数を増やし,さらに予定している風力発電施設から発生する変動性低周波音のフィールド調査を充実させるための機材整備などに使用する予定である.
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