変動性低周波音(以下,変動音)を対象に,等価音圧レベルや変動周期を変えて被験者に全身暴露したときの心理生理反応を測定し,量-反応関係について重点的に検討した. 生理反応の評価指標は,前年度と同様,LF/HF,唾液アミラーゼ活性(SAA),α波ブロッキングを捉えてストレス反応を測定するβ/αである.心理反応は,5段階評定アンケートで不快感を測定した.また,変動音を構成する物理量(搬送波周波数,変動周期,振幅変調レベル)を変えて被験者に暴露し,主観的印象(不快感,圧迫感,振動感,変動感)とME法により変動音の感覚的強度を測定した.比較のため,変動音と同じ等価騒音レベルに設定した定常性低周波音(以下,定常音)も条件に加えた. 変動音暴露により安静時に対してストレス反応が生じ,脳波から精神的負荷が観測され,不快感と変動周期の関係は搬送波周波数により異なる傾向であった.変動音の不快感とLF/HF,SAAとの関係を調べた結果,いずれも不快感との相関は弱いが,不快に感じると交感神経が優位に働く傾向がみられた.よって,本研究の音条件範囲では不快感とLF/HF,SAAは対応関係を示すと考えられる. 変動音を構成する物理量と心理反応量(5段階評定アンケート,ME法)との関係を検証した.変動音の感覚的強度は,搬送波周波数が同じ場合,変動周期と振幅変調レベルによらず一定であり,定常音と比較しても違いはみられない.つまり,感覚的強度は変動音と定常音は同様に評価してよいと考えられる.主観的印象評価の結果,搬送波周波数が同じ場合,定常音より変動音の方がいずれの印象も大きくなる傾向がみられた.不快感と圧迫感は振幅変調レベルの増加に伴い直線的に増加し,変動感は変動周期が長くなると減少した.よって,主観的印象評価は変動周期や振幅変調レベルによって異なるため,定常音と変動音の評価は同一に扱えないと考えられる.
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