研究課題/領域番号 |
25420616
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
富永 禎秀 新潟工科大学, 工学部, 教授 (00278079)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 市街地風環境 / CFD / 非定常変動 / RANS |
研究概要 |
本研究では,換気・通風や汚染質の拡散予測において特に重要となる市街地の弱風環境を,少ない計算負荷で精度よく予測するCFD解析手法を確立することを目的としている。現在,一般的であるRANS(レイノルズ平均を施した運動方程式を解く乱流のモデル化方法)の定常解析では再現できない,建物周辺の渦放出等に伴う組織的な変動を非定常解析(Unsteady RANS; URANS)によって再現することによって弱風領域の予測精度の向上を図る。 まず系統的風洞実験により,市街地風環境における組織的な非定常変動の存在が平均速度分布や乱流エネルギー分布に及ぼす影響を明らかにした。風速3成分を高応答に計測可能なスプリットファイバープローブ及び濃度変動を高応答に計測可能な高応答性炭化水素濃度計を用いて,建物周辺の流れ場・拡散場の変動時系列データを取得し,対象流れ場や流入条件の違いによる組織的非定常変動と乱流変動の寄与の違いを考察した。 さらに,上記の実験結果や既往の研究をベースに,カルマン渦のような組織的な非定常構造と小スケールの乱流変動の相関を考慮する新たな乱流モデルを構築した。一般的な定常RANS計算で用いられる乱流モデル(例えば標準k-εモデル,RNG k-εモデル等)を用いて非定常計算を行っても,建物周辺の非定常性の変動は再現されない原因は,平均流が有する比較的大きなスケールの組織的非定常変動が有する運動エネルギーから小スケールの乱流エネルギーへ行われるべきエネルギー輸送が,乱流モデルにおいて適切に表現されていない(あるいはモデル係数がそのような流れの非定常性を考慮して決定されていない)ためであるとの仮説を立て、その検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平均流が有する比較的大きなスケールの組織的非定常変動が有する運動エネルギーから小スケールの乱流エネルギーへのエネルギー輸送を組み込んだ新しいモデルを構築し、その結果を高層建物周辺流れにおいて検証することができた。成果論文は本年6月にドイツで開催される数値風工学の国際会議において採択され、発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に実施した風洞実験結果及び基本ケースのCFD解析結果に基づき,URANSによる解析が成立するための流れ場,乱流モデル,境界条件及び各種パラメータの必要条件を整理する。そして,この必要条件の一般性を,ベンチマークテストなどの各種の流れ場を対象とした解析に基づき検証し,その適用範囲や精度を,流れ構造の再現メカニズムの観点から確認する。さらには,上記の解析を対象に,LES及び一般的な定常のRANS計算を同条件で行うことによって,相対的な精度や計算負荷を比較し,URANS解析手法の優位性及び適用性評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
情報収集のための出張が、日常業務の関係で予定通りできなかった。 本年度の旅費として利用し、積極的な情報収集に努めたい。
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