研究課題/領域番号 |
25420624
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
三橋 伸夫 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50229746)
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研究分担者 |
佐藤 栄治 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40453964)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 城中村 / 中国広州市 / 都市化 / 集落固有性 / 居住域 / 再整備 |
研究実績の概要 |
城中村は中国大都市の市街地域に立地する、空間的には都市化が進行しつつ、社会経済的には農村的性格を有する農村集落である。中国の経済発展に支えられ、土地や建物への集落内外からの投資により集落居住域は高層・高密化し固有性を喪失するのが一般的な傾向であるが、歴史や文化ならびに農業をはじめとする産業にもとづく集落の固有性を生かした居住域の再整備の可能性を探ることが本研究の目的である。 前年度に現地調査を行った京塘村ならびに蓮塘村の2村に、過去数年内に現地調査を行った他の先行調査集落を加えて、比較分析を行った。広州市市街地中心から30km圏外に立地する京塘村ならびに蓮塘村について、以下の事項が明らかとなった。①住宅を含む建物総数については9.9%の減少(京塘村、2009年~2014年)が見られた。②建物の構造種別では、木造+煉瓦造、煉瓦造という古いタイプが減少し、RC+煉瓦、RCという新しいタイプに建て替わっている(同上)。③また、平屋建てが減少し3階建て以上が増加しており、その内容は増築と建替えの双方から成っている(同上)。 以上のように、建物総数が減少している城中村は今回はじめて確認でき、その理由として聞き取り調査からは、市街地までの通勤ができないため若い住民を中心に村外の転出していることが主な理由と考えられる。その結果、「空心村」問題、すなわち居住地内に空き家が顕在化している。京塘村、蓮塘村それぞれの近傍には、新しい工業団地、住宅団地の建設も始まってきているが、近隣村の雇用の受け皿に未だなってはいない。 他方、両村については共にグリーンツーリズム、歴史文化ツーリズムの可能性を見出すことができ、村の限られた財政で農業環境を整備すること、歴史的遺構や伝統的住宅の修復・保全と利活用を進めることが課題である。そのためには、広州市・区政府による財政支援、技術的・情報的な支援が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に現地調査を行った蓮塘村における集落の白地図データが、村の行政管轄が近年に広州市に統合された旧増城市であるため、広州市として統一されたものに平成26年度時点で未だ編集されておらず、入手ができなかった。このため、蓮塘村については、集落居住域内の建物の建設状況についての経年的な変化の分析に着手できていない。それに伴って、他城中村との比較あるいは集落固有性に関する分析が不十分である。 さらに、上記事項を含む諸般の事情により平成27年度には現地補足調査を実施することができず、データ整理と分析が限られたものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、あらかじめ蓮塘村に関する白地図の存在を確認し入手した上で、最終的な集落相互間の全体的な比較分析、集落固有性に関する分析を行う。そして、現地調査による補足が必要な事項について全般的な検討とデータ点検をふまえて現地調査を実施し、最終的なとりまとめを行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の複数の理由により、研究期間を1年延長して、当初の研究計画にもとづく分析を行い最終的なとりまとめを行うため。 ①本研究の研究協力者である黎庶旌氏が長期の海外出張のため不在となり、研究うちあわせの進捗が滞った。②調査対象地の広州市への行政管轄編入が近年であったため、現地調査を行った集落(城中村)の一部で研究方法上必須となるデータの入手に時間がかかることが判明した。③研究代表者が体調を崩し2週間入院した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、研究協力者(東京都在住)との複数回の研究うちあわせ、研究データの分析・整理に要する人件費、消耗品代、最終的な研究とりまとめに当たっての現地補足調査のための海外旅費、国内学会での研究発表等のための国内旅費、として使用する予定である。
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