日本でまだ規定がない「環境権」であるが、東日本大震災の原発事故でふるさとを喪失した人が8万人に及ぶことから、「環境権」自体を国際研究の対象とした。そこで、改めて人権としての「環境権」が認識されている海外の調査を行った。 また、日本においては、2011 年の原発事故で広がった環境汚染により、ふるさとの風景が日常生活から奪われたため、全国で訴訟が始まった。この際、環境そのものである「ふるさと」の概念の中に「景観」が含まれていることや、その補償に関わる諸課題が出ていることを背景に、ふるさとの概念と景観の概念の重なり、そして「環境権」と「景観権」の重なりを明らかにする必要があると考えた。 そこでわかったことは、環境権とは、1)環境情報を知る権利、2)環境に関わる計画決定に参加する権利、3)裁判を求める権利の3つから成ることであり、日本で参照すべきである。 さらに、環境権を具体化するためにできる現在の制度に、環境アセスメント制度と景観計画制度がある。しかし、日本の環境アセスメント制度は、国際的に見ると進んでいるとは言いがたい状況である。そこで、海外におけるモデルケースを研究し、日本での応用研究を試みた。そのうち、高層建造物の視覚的影響をアセスメントするための基礎的なデータと調査方法を確立することができた。また、この視覚的影響アセスメントを考慮した景観計画の策定も、東京のふるさとの景観として認識しているであろう東京タワーのような具体的な事例を用いて研究した。
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