本研究は、住宅と福祉の連携の実践の場として、都市内部に点在する高密度に高齢者が集住するスポットを対象に、新たな居住マネジメントの提案と課題の抽出を目的としている。平成27年度は、当初予定していた調査を実施した。 ①平成26年度末に実施したB団地における高齢者へのインタビュー調査の分析を進め、同地区内にある集合住宅地区(借家系)における機関調査、自治会・民生委員の協力による高齢居住者に対するアンケート調査の実施・集計・分析(有効回収220票)を行った。あわせて、ひとりぐらし高齢者への簡易インタビュー調査の実施・分析を行った。②奈良市内の都市再生機構団地(集合住宅地区(借家系))において、当初予定の機関調査に加え、民生委員の協力のもと、70歳以上ひとりぐらし高齢者を対象としたアンケート調査を実施することができ、その回収・集計・分析(有効回収126票)を行った。③集合住宅地区における居住者の高齢化に対応した独自の活動を実施している先進事例について、現地を訪問してインタビュー調査を実施した(持家系2団地・借家系3団地)。④全国の公営住宅管理主体(地方自治体住宅部局)を対象に、公営住宅の指定管理者が実施する業務内容について概要を把握するためのアンケート調査を実施した。 ⑤以上の調査結果について考察を行った。それによると、持家系に比べ、借家系の集合住宅地区は、入居期間の短い居住者層が過半を占め、属性によって多様な居住実態・意識・定住意向等に違いがあること、高齢居住者の見守り等の個別の支援において、専門機関の役割は持家系よりも大きいこと、共用部分等の空間活用の促進や居住者への個別対応が一層求められ、住宅管理者による新たな取組が必要なこと等が明らかになった。 なお、これらの成果を大学紀要(奈良県立大学研究季報)や日本建築学会、日本福祉のまちづくり学会などで発表した。
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