戸建住宅中心の住宅系市街地では、住宅の増改築、建替え等が居住者のライフステージの変化に伴って行われ、相続税対策や資産運用目的での建築行為が市街地の変容に大きな影響を与えている。そこで、資産運用目的の賃貸住宅を併設した住宅(以下「賃貸併用住宅」)を対象として、①建築動向や建築実態を把握し、②20 年前に建築された賃貸併用住宅の追跡調査をもとにオーナー家族の住生活の変化等を整理する。さらに、③住宅系市街地への影響およびこれら住宅の活用方策(地域での居場所としてのコミュ二ティ形成上の意義)を検討し、資産運用型の住宅建築の制御と住生活ニーズ面および市街地環境面を考慮した活用のあり方を示すことを目的とする。 本研究では、資産運用型住宅建築のうち賃貸併用住宅を対象として、①賃貸併用住宅の近年の建築動向・建築実態等(現状分析)、②築 20 年の賃貸併用住宅オーナー等の住生活ニーズ(内からの要求)への対応状況、③賃貸併用住宅建築による共同建化等の影響の評価、④地域資源としての可能性に関する調査を実施し、賃貸併用住宅の住宅ストックとしての位置づけを行い、その活用の可能性および方策を検討した。 その結果、住宅系市街地の更新過程における資産運用型住宅建築の制御と活用について、何らかの方策が必要と考えられた。また、賃貸併用住宅の現状把握および市街地更新における影響を評価するとともに、建築主家族の住生活ニーズの分析より、そのあり方と活用方策を示した。資産運用型住宅建築の建築動向を把握した結果、土地利用実態や土地利用規制の影響に加え、地域的な住宅需要との関係によることが推察された。建築実態の分析からは、敷地の形状や敷地の接道実態、敷地面積の影響が窺われた。賃貸併用住宅の建築主家族等の高齢化による居住実態や住生活ニーズの変化が大きいものの、居住継承にはつながっていないことが確認された。
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