研究課題/領域番号 |
25420649
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
田中 千歳 国士舘大学, 理工学部, 教授 (30346332)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スウェーデン / 疲労 / 保育環境の質 / 子育て支援 / 比較研究 / 家庭的保育 / 持続可能 |
研究概要 |
本研究は、我国の少子化時代に対応した、人口減少化の動向に立ち向か得る、快適・安全・安心な保育環境の質に関する環境整備条件を導き出すことを目的とする。 本年度は、我国(都内の杉並区、小平市・調布市をはじめとする11市区)とスウェーデン(Alvesta Kommun)における家庭的保育事例等の就学前保育環境の現状およびその特徴の把握を、アンケート調査、ヒアリング調査および疲労を通した生理学的調査を通じて行なった。 アンケート調査結果は、家庭福祉員のほとんどが40歳代以上で、40歳代になってから家庭福祉員を始めたという人が多く、そのうちの約7割が過去に保育業務の経験があった。住居形態は、個人所有戸建がほとんどであり、4~5LDKの2階建てが過半数を占めた。自宅を開放するにあたり、1人を除いて全員が安全面を最優先する工夫を実施していた。 全体の約7割の家庭福祉員が保育中に心身負担を感じ、特に腰痛と騒音による精神的負担が多かった。ヒアリング調査の結果でも、自宅の構造上の問題よりも、保育の動作上での負担が多かった。住居内では、居住空間と保育空間が混在しており、特に玄関に多く見られた。日本は室内に物が多いのも特徴であり、小さな部屋の間仕切りを取り払い一つの部屋としているものの、死角が多いことがわかった。 生理学的調査では、家庭福祉員の自宅はスウェーデンの被験者の方が広かったにも関わらず、保育時の活動量は日本の被験者の方が高かった。小さな部屋であるものの物が多く死角もあり、絶えず子供達に注意を払いながら床座による保育活動を行う日本の保育業務の特徴と、大きな自宅に遊具も備えられた広い庭で常に子供達に添うこともなく、座って見守ることの多いスウェーデンとの事情に大きな相違が認められた。今後は保育士の活動について改めて詳細に捉え直し、総合的に検討することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の計画通り、効果的に研究を推進し成果を得ている。今後、保育士がそれぞれ個別に活動する場面においても、協力体制と調査機材等の強化を図り、万全の体制で飛躍的な研究が展開できるように計画している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、前年度計画を踏まえ、両国の就学前保育環境や家庭保育環境の成立過程とソフト面の仕組について、ヒアリング調査を中心に実態把握を行う。そのために、次の3課題を設定する。 設定課題(1) 前年度設定の4課題に対する各種調査結果の分析(経費:デスクトップパソコン・ノートパソコン・デジタルカメラ):4つの検討課題に対する各種調査結果の分析 設定課題(2) 家庭的保育を中心とした保育環境の成立過程とソフト面の仕組の把握(経費:デスクトップパソコン・ノートパソコン):①首都圏及び地方都市の家庭的保育を中心とした保育環境の成立過程とソフト面の仕組把握調査 ②Alvesta Kommunの家庭的保育を中心とした環境の成立過程とソフト面の仕組把握調査 設定課題(3) 生理学的調査終了後の調査対象者へのフォローアップ調査、及び国内外補足調査(経費:生理学的実験装置・ノートパソコン・デジタルカメラ・デジタルビデオ):①労働環境としての保育環境に関する保育士及び教育士へのヒアリング並びにアンケート補強調査②調査対象地の保育環境整備に関する補足追跡調査及び補強調査
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、今年度の就学前保育環境の現状とその特徴把握について、次年度では改めて詳細に捉え直すとともに、さらに特性についても補強することで、本研究をより効率的・効果的に推進するために生じたものである。これは次年度の研究費用と合わせて、就学前保育環境のより詳細な実態把握を推進し、飛躍的に展開する研究遂行に使用する予定である。 次年度生じた使用額は、国内外補強調査及び研究調査打合せと生理学的実験フォロー調査に計上している。これらは次年度の研究費用と合わせて、国内外研究調査(国内3回・国外2回)の旅費を計画している。生理学的実験フォロー調査については、現有実験機器を中心に、保育士の行動データにも対応可能な広角デジタルカメラ及びデジタルビデオ等を用いて実施する計画である。 また、次年度の使用計画では、国内外各専門家による研究資料の提供及び翻訳協力、並びに研究補助として学生等による資料整理や採取データの図面化・電子化補助を計上している。データ整理や保管等については、市販の物品や消耗品を適宜組み合わせて支出するとともに、図書では、国内外の保育環境に関する建築学や環境デザイン学のみならず、福祉関係や政治社会学等の充実を図る計画である。加えて、研究成果発表及び動向調査のため学会発表とシンポジウムや研究会参加費を計上している。
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