研究課題/領域番号 |
25420650
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
橘 弘志 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (70277797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小規模生活単位型 / 高齢者居住施設 / 普及期 / 使いこなし / ハードとソフトとの整合性 |
研究概要 |
調査対象施設として、2000年代後半以降に開設した小規模生活単位型の特別養護老人ホームを2施設選定し、実態調査を遂行した。いずれの施設も、小規模生活単位型の空間構成を活用してよりよいケアを実施したいという施設側の意向を汲み、今後の環境改善に繋げていくという共通了解をとった上で調査を行った。 ハード面の把握として、対象とする施設の空間構成の特徴を把握し、設計者や運営者に対するヒアリングを行った。 ソフト面の把握としては、生活単位ごとに調査日における全スタッフを対象として追跡調査を行い、スタッフが一日の生活の流れの中で、どの空間で、誰に対して、どのような介護(間接介護/直接介護含む)に従事しているのか、その介護行為によって入居者のどのような生活がサポートされているのか、実態を把握するようにした。 入居者の生活の把握として、主に生活単位内外の共用空間におけるタイムスタディを実施し、施設内の生活の流れのなかで、どの空間が、誰によって、誰とともに、どのように使われているのか、そこにどのような生活の場面が展開されているのか、実態を把握した。 これら施設のハードとソフトとの整合性を分析し、入居者の生活の質およびスタッフによるケアの質の両面から環境評価を行っている。さらに、環境の使いこなしを進める上での実践的な知見を得るために、小規模ながら実験的な共用空間の環境改善提案を行い、改善前後の比較調査を実施した。入居者の生活の質にどのような影響を与えたか、生活のバリエーションを促すことができたのか、ケアの質に何らかの影響を与えたのか、等が分析の軸となる。その成果を踏まえて、より効果的な環境改善の提案につなげていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、普及期にある小規模生活単位型の高齢者居住施設を対象として、施設のハード・ソフト・入居者の生活の質の相互浸透的関係を捉えることから、施設空間構成について評価するとともに、ケアの質・生活の質を高めるための空間の使いこなし方を提案することにある。具体的には以下の3点を挙げた。(1)さまざまな現場において、ハードとソフトとの整合性を精査し、生活の質の面から評価を行うこと。不整合を起こさないケアの質を探る。(2)小規模生活単位型の空間構成を、ケアの質、生活の質の側面から評価し、より適切な空間構成のあり方を見出す。(3)現場における空間の使いこなし方の現状を捉え、空間のポテンシャルを活かすような使いこなし方を見出すとともに、その手法や技術を確立する。 今年度は2施設を対象として、(1)の調査・分析・評価を行うことができた。両施設とも同一の設計者による建築であり、比較的似たコンセプトのハードにおいて、ソフト面の相違が入居者の生活に与える影響について捉えることができた。仮説的に(2)にも取り組みを行い、プレ調査の段階ではあるが、環境改善の提案実験を行うことも試みた。次年度に向けて、より本格的な使いこなしの提案に結びつけるための下地を整えることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、小規模生活単位型の高齢者居住施設において、施設のハード・ソフト・入居者の生活の質の相互浸透的関係を捉えるための調査・分析を引き続いて行う予定である。施設の環境評価は、実態調査から得られた「施設の空間構成(ハード面)」、「ケアの実践(ソフト面)」、「入居者の生活の質」、の3項目それぞれの与え合う影響、および「施設環境の使いこなし」の視点から分析・考察を行っていく。これらの項目同士が関わりあった総合的な環境評価を行うことを試みる。 特に普及期における大きな課題として、基準に従いハード面を整えたものの、ケアのソフト面との整合性を欠き、小規模生活単位型という空間特性を十分に活用しきれていない実態が浮かび上がりつつある。本来目標とされる「ユニットケア」がどのように実現されているのか、その達成度や乖離度を見出すことは、社会的にも大きな意味をもつものと考えられる。 そして、得られた知見を活かし、対象施設において、ハードとソフトとの整合性を促すような空間の使いこなし方を提案し、環境改善の実践的試みを遂行していく予定である。実際の介護の現場における環境の使いこなしの質を高めることで、入居者の生活の質やケアの質にどのような影響を及ぼすのか、その評価分析を行うとともに、理論構築を行うことが、今後の課題となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数が合わなかったため 次年度に消耗品等として利用
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