研究課題/領域番号 |
25420660
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
乾 亨 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90278482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 包括的地域自治組織(協議会型住民自治組織) / 地域コミュニティ / 地域運営 / 事務局機能 / 活動拠点 |
研究概要 |
所期の研究目的を遂行するため、研究実施計画に沿ってにH25年度に行った主な調査・研究活動は以下の通り。 1.包括的地域自治組織の先駆事例と位置付けられる神戸市の真野地区において、地域活動に継続的に関わりながら地域拠点、および事務局機能の役割について参与観察を継続中。昨年度末には地域住民組織との協力で、地域活動や地域拠点、地域組織の認知度や地域課題を明らかにするための全戸アンケート調査を行い、現在データの集計作業を行っている。 2.8月には福岡市に滞在し、福岡市の自治協議会の活動状況、および拠点(公民館)の利用状況や自治協議会の事務局機能についての調査、および宗像市、北九州市における包括的地域自治組織についての調査を行った。具体的には、福岡市コミュニティ推進課ヒアリング、および片江校区・南片江校区・城南校区・金山校区・堤校区・壱岐南校区において、自治協議会長、公民館長に対するヒアリングおよび拠点(公民館)使用状況調査を行い、あわせて、宗像市の赤間コミュニティセンター、北九州市の西小倉市民センターの活動実態調査も行った。現在、この調査で得られたデータを整理し、本年度調査に活かす準備を進めている。 3.上記調査と並行して、7月に開催されたコミュニティ政策学会福岡大会のシンポジウム(コーディネーター:乾)において、福岡市・北九州市・宗像市の包括的地域自治組織の比較検証を行い、そのなかで、事務局機能や活動拠点の重要性についての議論を進めた。 4.京都においては、学区地域活動が盛んな本能学区(中京区)において、学区拠点「本能館」を活用した地域活動の展開について、地域活動に関わりながら、継続的参与型観察を継続。 以上の一連の調査によって、地域運営の要としての事務局機能の重要性、活動を活発化させるうえでの拠点の重要性や備えるべき要件を多角的に把握できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画に記した通り①福岡市の公民館(自治協議会の拠点+事務局)、②神戸市真野地区(包括的地域自治組織の先駆事例における事務局機能・拠点機能)、③京都市の先進的自治連合会(本能学区における本能館活用による地域コミュニティ活性化)という、条件や性格の異なる3事例に対する調査に取組み、参与観察型調査も含め、実態に即した詳細なデータを得ることができている。 とりわけ、福岡市事例については、福岡市行政の協力も得て、全校区における公民館の活動状況などのデータも入手することができていること、コミュニティ政策学会福岡大会での議論のなかで論理化に向けていくつかのヒントが獲得できたことなど、大きく進展できたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点まで順調に進展していることもあり、本年度も、所期の研究計画に基づき以下の内容について調査研究を遂行する ①福岡市および周辺都市(宗像・北九州)の自治協議会及び公民館の現地調査を継続し、事例の蓄積を進める。あわせて、2年間における調査内容を研究ノートのような形でまとめたい。 ②真野地区については、年度末に行った全戸調査の成果を地域に返し、地域の中での議論を受け止めながら、真野まちづくりにおける「自治」や「地域運営」を支える要件をあきらかにしていく。 ③京都調査では、本能学区における参与型調査を継続し、「本能館」の活用実態を記録しながら「優れた場所」が地域活動の活性化を促しうる状況を実証的に明らかにしていく。 ④本年度はさらに、研究計画に従って、福岡市同様、校区ごとに公民館を保有する大津市に対する調査を行い、福岡市と比較することで、「場」と「組織」と「コミュニティ」と「行政」の関係による差異性や大津市の今後の可能性(課題)について検証を進めたい。 なお、当初、研究計画で提起した宝塚市の包括的地域自治組織調査(④初期に包括的地域自治組織を制度化した地域という位置づけ)については、課題設定において、制度化後10年を経過している福岡市や北九州市と重なるため、調査対象からはずすことを検討中。それにかわる調査として、活動拠点と事務局機能を有する地域運営組織(包括的地域自治組織に限らない)の取材調査を行う予定で、現在対象事例を選定中である。また、比較検証の幅を広げるため、公共から質の高い場所を貸与されることで活発な活動を展開しているイタリア(ボローニャとその周辺都市)の高齢者社会センターの「拠点(場所)の役割と事務局機能」についての調査を行うことも検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費と人件費の支出が当初予定より少なくて済んだ。旅費については、昨年度の福岡調査が予定していたよりもスムーズに進行し、滞在日程が予定よりも短くなり、かつ福岡を往復する頻度が予定より少なかったことによる。 また、人件費は、主に神戸の真野事例の定点観察調査補助要員のためのものであるが、25年度の真野地区の活動のスタートが遅かったこともあり、調査日程が予定よりも少なかった。 平成26年度は夏期に長期間福岡に滞在し、福岡市における複数の自治協議会活動への参与観察調査を行うだけでなく、宗像市、北九州市をはじめ周辺市町村の事例調査を集中的に行う予定である。また、福岡市およびその周辺だけでなく、他地域の地域自治組織における事務局機能・拠点機能の整備状況についてもサーベイを行う予定であり、さらに、夏期あるいは春季にイタリアの市民活動組織についての調査に取組むことも計画しているため、平成26年度に予定している助成金(交通費)を上回る費用を必要とする。人件費ついては、真野地区の活動の活発化に合わせて定点観察の頻度が増すこと、および観測データの整備作業が生じることから、25年度を上回る出費が予想される。
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