研究課題/領域番号 |
25420660
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
乾 亨 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90278482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 協議会型住民自治組織 / 地域コミュニティ / 地域活動拠点 / 事務局機能 / 地域運営 |
研究実績の概要 |
研究目的を達成するため、前年度の成果を継承しつつH27年度に行った主な研究活動は以下の通り。 1.協議会型住民自治組織の先駆的事例である神戸市の「真野地区まちづくり推進会」の参与型観察調査を継続中。本年度は、補助事業期間延長承認申請の事由②にも記したように、'65年以降、真野まちづくりを担ってきた「尻池南部地区自治連合協議会」が解散し、地区の宿願であった自治連合会一本化(真野地区自治連合会)が果たされたこと、またそれを契機にあらためて地域活動の基盤である町自治会の強化に取り組み始めたことにより、推進会事務局の役割がより重要化・活発化していることに注目している。 2.福岡県筑紫野市、久留米市、うきは市、大牟田市において、協議会型住民自治組織に関する市制度、公民館など拠点施設の有無や活用状況、事務局体制などについて調査を行った。この調査の過程で、協議会型住民自治組織の仕組みや地域コミュニティのなかでの位置づけが旧来の自治組織の型や市政との関わりに左右されていることが明らかになった。とりわけ、大牟田市の旧組織とそれを継承する協議会の形態および活動性はこれまで調査してきた他都市と異なる点が多く、H28年度に追加調査を行なう予定である(延長承認申請の事由①)。 3.京都の本能学区における地域拠点「本能館」活用による地域コミュニティ活動についても参与観察を継続した。 以上、一連の調査により、地域活動の活性化、コミュニティ形成において、地域拠点と地域住民組織の仕組みと事務局機能の充実の重要性と、その備えるべき要件が明らかになりつつある。なお、日程の関係上、予定していた海外調査(イタリアの社会センター)は行えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、真野地区まちづくり推進会を中心とする「真野まちづくり」や京都の本能学区の地域活動についての参与観察と福岡市および周辺都市での協議会型住民自治組織について、組織の仕組みや拠点機能、事務局機能についての調査を重ねることで、制度化されたコミュニティ組織の可能性を論証するためのデータ蓄積を重ね一定の成果を得てきたし、得られた知見を論考として公表することで、一定程度、地域コミュニティの活性化に実践的貢献も行いえた。 とはいえ、補助事業期間延長承認申請に記したように、主たる調査対象の一つである真野まちづくりにおける地域組織の改革があったため、その影響について参与観察を深める必要性が生じたこと、福岡調査において新しい型の地域活動が見いだされたことで追加調査の必要性が生じたことの事由により、成果をまとめる時期が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
延長期間であることを自覚しつつ、これまでの成果をまとめつつ、あらたな事象の調査を継続する。具体的な研究計画は以下の通り。 ①真野地区まちづくり推進会については、自治連合会一本化と活動の基盤である自治会の強化の動きに着目しつつ、拠点の活用状況事務局機能の実態などについて参与観察を継続する。とりわけ、最近、課題化している若年層の取り込みの動きに注目する。 ②夏期に、大牟田市の協議会型住民自治組織の事例調査を中心として、福岡周辺都市調査を行なう。 ③京都市の本能学区において、学区拠点である本能館の活用状況と、活動を担う複数の地域団体の連携事務局機能について、参与観察を継続する。 ④福岡市の公民館(公的施設)や大阪の自治会館(助成による民間施設)の比較検証を行いたい。 ⑤昨年度も行えなかったボローニャの社会センター調査(拠点+事務局)を夏期に行うことを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
福岡調査を夏期のほか春季にも行う予定であったが、業務の関係上行えなかった。同じく海外調査も業務の関係上延期した。こうした理由により旅費支出が予定より少なかった。 また、補助事業延長承認申請でも述べたように、27年度だけでは対応できないあらたな調査課題がみつかったため、年度後半は研究費の支出をなるべく抑えるように努めた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度の主な支出計画は以下の通り。 ①夏期期間を活用して、大牟田市をはじめ福岡周辺の協議会型住民自治組織の事例調査(フィールドワーク)を行なうため、その旅費として使用する。②真野地区の参与型調査を継続するため、拠点の定点観察アルバイト費および交通費として使用する。③イタリアのボローニャにおいて、社会センター(市民活動組織)の拠点・事務局調査を行なう際の旅費及び通訳者経費として使用する。
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