研究課題/領域番号 |
25420667
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西澤 泰彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80242915)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 濃尾地震 / 明治東京地震 / 庄内地震 / 明治芸予地震 / 陸羽地震 / 姉川地震 / 震災予防調査会 / 震災報告 |
研究実績の概要 |
平成26年度の成果は次のとおり。 ⅰ)被害実態の把握として、平成26年度は濃尾地震を中心に建築関係者による被害報告や写真情報の調査を進めた。その結果、被害報告については、濃尾地震直後、現地調査をおこなっていたJ.コンドル、横河民輔、佐藤勇造が記した報告の存在を確認した。J.コンドルは、濃尾地震の被害調査について、英語原文が、英字新聞”Japan Weekly Mail”(1892年1月30日付)に掲載されていることを確認した。また、コンドルは、日本能弁学会でも講演しており、これも”Japan Weekly Mail”(1891年12月12日付)に掲載されていた。また、日本建築学会図書室に、横河が著した『地震』と、佐藤が著した『地震家屋』が保管されていることを確認した。 ⅱ)遺構調査として、次の4件から濃尾地震前後の耐震技術の把握ができた。1件目は、濃尾地震以前の1887年頃に建築された名古屋・堀川沿いの料亭「鳥久」で、隣り合う梁と桁でできた正方形フレームの対角線状に水平材を渡して、梁と桁を繋いでいたことが判明した。2件目は、幕末(1849年)竣工の木造住宅・氷室家住宅(津島市指定有形文化財)で、ここでは、筋違の力学的特性を理解せず、筋違を加えていた。3件目は、1912年竣工の旧第十五師団長官舎で、4件目は豊田佐助邸で、両者共に角度の緩い筋違が多数使われていた。 上記の結果、次の3点が判明した。①濃尾地震では専門家が建築被害の実態把握に努め、それらは、耐震化技術の開発に結び付く視点から、建物の構造や施工精度に対して比率で考えることが提示されていた。②イギリス人であるコンドルが、トラスではなく和小屋を評価し、それを示す事例として在来技術による小屋組の補強例が存在していた。③筋違の形状について、力学的には不利であっても、施工の都合から緩い短い筋違が多用されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、平成25年度からの継続による文献調査をすすめ、概ね順調に進んだ。特に、震災予防調査会が設立される前に起きていた濃尾地震については、建築家による独自の被害報告として、コンドル、横河民輔、佐藤勇造の論著を確認できたことは、大きな成果であった。また、各地震直後の新聞報道記事についても、予定以上に調査がはかどり、対象とする地震すべてについて、全国紙の調査はすべて終えた。ただし、地方新聞については所蔵が限られており、庄内地震と陸羽地震についての調査が一部残った。これは、平成27年度に補足調査をおこなう予定である。また、国立公文書館所蔵『公文雑纂』については、手間のかかる調査であったが、ほぼ調査を終え、『公文類聚』については、一部未調査となった。ただし、『公文雑纂』の方がより広範に情報が綴られており、『公文類聚』について、大きな見落としは少ないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、平成27年度は文献調査と遺構調査の続きをおこなう予定である。特に、一部未調査となった庄内地震と陸羽地震に関する地方新聞の調査、これら二つに加え、明治芸予地震と姉川地震における遺構調査について、遺構の確認を進める予定である。そして、平成27年度末には「明治時代後半の大規模地震における被害実態一覧」を作成予定である。
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