研究最終年度となる今年度は、年度前半に国内の伝統的建造物群保存地区のランドスケープ概念からの再読を行い、年度後半には大学業務により派遣されたアメリカ合衆国コロンビア大学の所在するニューヨーク市において、同市における町並み保存の実態調査を行い、日本における町並み保存との比較研究を行った。 国内の伝統的建造物群保存地区の再読は、昨年度実施した倉吉市打吹玉川地区を対象に、町家のファサード形式の再整理、水路形式の読解を中心に、町並みの再読を行い、都市史と生業のあり方を重ね合わせることで、町並み保存への新たな視点の提示を試みた。その成果を学術講演及び論文として発表する準備をしている。 ニューヨーク市の町並み保存については、マンハッタン島内に51ヶ所設けられているHistoric Districtを現地視察した上で、1 町並み保存の制度運用、2 保存地区における新築建物のデザイン方法につき、事例収集と分析を行った。町並み保存の制度運用に関しては、ニューヨーク市のLandmark Preservation Committeeを訪問し、担当者へのインタビューと公聴会の傍聴を行った結果、市民参加、住民意識、個々の保存案件での議論内容につき、日本の事例とは大きく異なる知見が得られた。新築建物のデザイン方法については、著名建築家による事例と一般的な事例との間におけるデザインの許容度の違いなどについて知見を得ることができた。ニューヨーク市における町並み保存を日本のそれと対比させ、3月にフランス極東学院京都センターにて講演「日本における町並み保存の特異性―ニューヨーク市の歴史保存との比較を通して」を行った。 現在、以上の研究を取りまとめ、論文として発表する準備をしている。
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