研究課題/領域番号 |
25420669
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
松田 剛佐 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (20293988)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 木材生産史 / 歴史的木材規格 / 天竜川水運 / 森林史 |
研究概要 |
天竜川水運に関わる史料として、『田代家文書』の読解及び分析をすすめた。田代家は、近世に遠江国北鹿島村の名主を勤めると共に天竜川の筏問屋も営んだ。田代家に伝来する村方文書のうち、天竜川水運に関わるものを抽出し、さらにその中から特に木材生産に関わる記述を選出した。徳川頼宣移封に伴う城番設置時のものと思われる、元和五年の駿府城の御用材に関わる文書からは、以下のような知見が得られた。すなわち、①規格材として、長さは2間材と2間半材があり、それぞれに対して断面の大きさが3寸7分角から6寸角まで用意されていること。②特に4寸角から5寸角の間は、1分刻みの寸法で用意されていること。③最も使用されている規格材は2間×5寸角材であること。④このときに使用された材積は、2間1尺材を0.33立方メートルとした場合、総計22.605立方メートルとなること。京都大学の既往研究などによると、文化財建造物の材積の平均が0.5平方メートル分の立方メートルであるので、上記の材積は45.21平方メートル分の床面積の文化財建造物に相当すること、すなわち、軽微な新築あるいは改修であった可能性があること。⑤この分量は、この年の御用木の1パーセント分を使用したと思われること。⑥この時の木材の値段は、2間1尺角材1本辺り25.78升と求められること。同じ断面なら、2間材と2間半材とでは1.5倍の値段差があること。2間材では断面の寸法1分ごとに2合づつ値段が増減すること。⑦規格と値段の関係を分析すると、短い2間材の方が割安であること。現代の工場生産的な視点とは逆行するようであるが、おそらく2間材の方が流通量が多かった為であると推測できること。⑧以上から、当時は2間材×4~5寸角が主要規格であることが明らかになった。 また、上記の個別的な見解を、さらに大きな知見から考察するため、既往研究の収集を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初目標とした史料分析を進展することが出来ているが、さらに新出史料を発掘したい。
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今後の研究の推進方策 |
田代家文書をさらに読解すると共に、既往研究を広く集めることで、天竜川水運という一地域史にとどまらないように、広く近世木材流通史の視座に位置づけたい。また、天竜川水運だけでなく、他地域の木材関連資料をさらに発掘したい。
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