伝統的な日本建築に用いられた木材を対象に、市場経済が成立した近世の「木材生産・流通・消費」のシステムを明らかにすべく、包括的な視座を獲得する研究を行った。即ち、17世紀に用材生産が極限まで進行し、18世紀からの育林事業で林分回復がはかられ、19世紀には森林保全技術の展開によって森林資源の保護が重んじられたことが、流通量や規格の変化から明らかに出来た。また木材市場は、17世紀に流通機構が整備されたのを契機に、御用材を扱った商人達から、水運開発に絡む諸藩との結びつきを強めた地域で展開した。さらに木材は、建築材料として重要であっただけでなく、国土の保全や生業や経済の基板を形成した重要な存在であった。
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