重要なヘレニズム都市であるギリシアのメッセネ遺跡の劇場は、ローマ時代に大規模な改築をうけ、舞台建物がローマ風の三層構造となった。舞台前面のスカエナエ・フロンスは当初2世紀半ばと推定されていたが、建築装飾の分析からさらに1世紀近く遡る1世紀中ばの建造であり、より厳密にはクラウディウス帝からヴェスパシアヌス帝(41~79年)であることが明らかになった。オーダー各部に施された建築装飾はギリシアや小アジアに広く類例が見られ、中でもフリーズや柱頭の装飾は、いずれも1世紀後半のギリシア本土で流行したモチーフであることが明らかとなった。このことは1世紀におけるローマ建築と地方様式との関係を示唆している。
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