チェンバーズのギリシア建築批評は、表現の激しさやギリシア指向の高まりへの反発から感性的とされるが、建築史的観察にもとづく起源や発展に対する視点、建築評価における構造的視点など、評価のもつ論理性も注目されてよい。また、部屋の大きさの規程は、古典的比例論への批判を基礎とするが、かれの主張は、単に美的な判断に関わるだけでなく、建物の建てられる状況や気候、部屋の目的や使われかた、そしてみえかたをも含む視点からなっていたといえる。ヒュームの思考が直接的に影響をもったとはいえない。しかし、方法論的に、ルネサンス以降の古典的比例論とその構成を、方法論的に超えていく刺激を与えたことは確かであるといえる。
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