本研究は裏目尺による社寺建築の計画技法に関する研究である。裏目尺は√2倍の尺のことで、これまでは軒規矩術法においてのみ使われると考えられてきたが、本研究によって、裏目尺は規矩術以外にも多様な使い方が存在することが明らかになった。例えば東大寺南大門や法隆寺夢殿などでは、建物全体が裏目尺で計画されていて、同様の事例は大変多いことを明らかにした。また、仏堂や神社本殿など多くの建物の全体規模が裏目尺で定められていることを明らかにした。 こうした技法は現在の枝割制の解釈とまったく反対の計画法であり、日本建築の計画技法を根本から問い直す手掛かりとなると考えられる。
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