研究課題/領域番号 |
25420678
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
横手 義洋 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (10345100)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アーツ・アンド・クラフツ運動 |
研究概要 |
米国の建築家ラルフ・アダムス・クラムの著書『印象Impressions』には、先行して英米で出されていた日本建築書の内容を踏まえた上で、次のような中世主義的建築観が表れていた。古代・中世建築に対するクラムの評価基準は、来日前のクラムの中世主義、ラスキンの思想の反映でもある。日本建築に注がれたクラムの視線は、岡倉天心の『日本美術史』における時代評価を反映すると同時に、クラムの個人的な信条、すなわち、高教会派の強い倫理観と伝統主義を彷彿とさせるものでもあり、また一面では世紀末米国の建築事情、すなわち、アーツ・アンド・クラフツ運動と連動していたこともあきらかになった。たとえば、米国アーツ・アンド・クラフツ運動下のジャーナリズム、『The Craftsman』 誌においては、『印象Impressions』が完全にアーツ・アンド・クラフツ運動の一翼を担う書として価値づけられ、日本建築に論理性、簡素性、純粋性が認められ、強調されている。当時の米国には、日本と同じく木造住宅を要する国として、国家様式の可能性までを訴えた論者がいたくらいである。さらに、日本建築に注がれた視線は、1910年代になると米国国家様式の希求の中で有機的建築とも結びつけられた。ただし、この結びつきはその後あまり理論的に深化しなかったのであり、有機的建築が独り米国建築の夢をつないでゆく。一方で、クラムの『印象Impressions』は日本文化論の一冊として徐々にイデオロギー色を薄めていったことも確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の評価や文献調査は予定していた以上に進展している。成果の一部を学会発表論文にもまとめることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、海外の学会において研究成果発表を行う予定があるので、そのスケジュールに合わせて、建築調査の準備を進めたい。また、作業効率を高めるべく、海外渡航時にはあらたな文献収集も行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた海外建築調査一件が延期になったため。代わりに、文献調査と史料整理を優先して進めた。結果、海外渡航分の旅費が予定よりも低くなり、繰越となった。 現在、前年度延期となった海外建築調査の準備を進めており、8月と10月に実施の予定である。したがって、前年度の繰越分は主に海外渡航用の旅費に当てられることになる。海外の学会発表と連動した建築調査を想定しているので、研究計画の大幅な変更とはならない見込みである。
|