アーツ・アンド・クラフツ運動に与した欧米建築家による日本建築評価は、当初こそ素朴な好奇心に動機づけられていたが、次第にナショナリズムや近代国家にふさわしい様式探求の文脈によって強化された。アメリカ人建築家ラルフ・アダムス・クラムの著した『日本建築の印象』は、その典型的な作品である。とりわけ7-12世紀の寺社建築を評価する際には、木構造の持つ近代的な質が高く称賛され、「論理的で」、「偽りのない」表現という言葉が用いられた。こうした独特なイデオロギーの下、あるいは、建築の新たな様式探求の途上においては、日本建築の評価が有機的建築の理想とも関係づけられ、論じられることも確認できた。
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