研究課題/領域番号 |
25420681
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
市原 出 東京工芸大学, 工学部, 教授 (20267529)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロウハウス / フィラデルフィア / ボストン / 街路景観 / 接地作法 / 最適再利用 / 持続性 / 可変性 |
研究概要 |
敷地との関係で特徴的な構成をもつ街区におけるロウハウスの設置作法と街区構成の多様性を記録するため、現地学術調査を行った。実施時期は2013年9月8日から15日の8日間で、調査の具体的内容と成果は以下のとおりである。接地作法の課題については、ボストンのビーコンヒル地区の4街路に面する253軒のロウハウスと街路との境界上にある形態要素の撮影と実測を行った。その結果、約1,000要素のデータを得た。街区構成の多様性については、フィラデルフィアのソサエティヒル地区、ワシントンスクエア西地区、リッテンハウススクエア地区の3地区において、街区とロウハウスの規模(高さ、幅等)の計測を行った。その結果13街区、22街路、131地点のデータを得た。さらにそれら2都市の対象街区を構成するロウハウスの連続景観を記録するための写真撮影を行った。これは既に作成済みの連続写真をアップデートするための資料となる。 都市街路景観の持続性にかかわる上記に加え、内部の可変性の実証と、具体的可変例を捕捉するための文献調査を行った。対象文献は主にアメリカの建築専門誌であるが、主要誌を調査した結果、改修事例を主とする期待された情報が得られない可能性を確認するに至った。そのため、ロウハウス内部の空間構成を知るための資料について再検討を行った。その結果、各都市の資料館、図書館、歴史協会等に保存されている図面を収集する方法にあらためた。取得した図面について、写真撮影によって生じた歪みを補正する作業を行った。具体的分析は今年度行うが、それが可能な状態になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地学術調査において、セキュリティの観点から、一部レーザー距離計の使用を断念した。具体的には、開口部からレーザー光線が屋内に入ることが懸念されたため、ロウハウスの高さを計測する際には使用しなかった。それに代えて、部分の寸法を測定した上で、全体、各所の寸法を割り出す方法をとったが、精度を確保するためにデータ整理に大変時間を要した。 研究実績の概要に記したとおり、建築専門誌対象の文献調査において期待した情報を得ることができなかった。文献以外から収集した図面をそれらを内部空間の資料とすべく補正作業を行った。その作業に大変時間を要した。しかし、電子ジャーナルによらない図面の収集と補正は当初平成26年度に行う予定であったので、その一部を先行して行ったことになる。 全体として成果を公表するに至っていないことが反省点であり、次項に記すとおりの対応をとる計画である。
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今後の研究の推進方策 |
ボストンを対象とする接地作法、フィラデルフィアを対象とする街区構成の多様性の解明について、25年度に得られたデータからそれぞれ成果のまとめを行う。半年を目途として成果を公表する計画である。 ロウハウス内部の可変性については、対象建築専門誌の範囲を広げ、ないし変更して再度検討する。本研究課題の資料として有効でないことを確認する作業になるかもしれないが、行うべきであると考えている。それと並行してオリジナルの図面収集、補正作業、デジタルデータ化を進める。 ボストンのロウハウスの接地作法の研究は、ビーコンヒルという傾斜地におけるロウハウスと街路を境界をあり方を問題にした。最初期につくられたこれらのロウハウスの接地作法がどのように展開されるかを検討する。またフィラデルフィアの街区構成の多様性について、ロウハウスと街路のそれぞれの形態要素を捕捉することで、実存的な意味で内部を形成していると考えられる街路の特質を検討する。これら2都市で再度現地調査を行うことでデータ収集し、その整理、分析、まとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外学術調査は3人で行う計画であったが、調査方法を詳細に検討した4人で行った。そのため旅費支出が当初予定より膨らんだ。一方で、資料複写が資料の状態により写真撮影となったため、資料複写費が発生しなかった。 26年度に再度海外学術調査を行うが、当初計画の3人ではなくやはり4人以上で行う必要が確認されたため、その費用にあてる計画である。
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