研究課題/領域番号 |
25420682
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長岡造形大学 |
研究代表者 |
木村 勉 長岡造形大学, 造形学部, 教授 (60280608)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保存修理 / 修復 / 修復技術 / 活用 / 耐震対策 / 構造補強 |
研究概要 |
現在実施されている重要文化財豊平館保存修理の解体工事にしたがい、建物の内外、設備、活用にともなう設備など、昭和期に用いられた修復技術や修理の実態の調査を実施した。また、全国各地にある昭和期修復の事例に関する情報収集をおこない、一部の事例については予備的調査もふくめ現地調査を実施した。 1 豊平館の調査について、修復事業の進捗に沿って特に注視すべき部分の観察を以下のとおりおこなうとともに、資料収集と関係者へのヒアリングを進めた。外観では、外壁ペンキ塗装の耐久性とその後の塗り重ね仕様、中央車寄の屋根の養生措置と破損状況、東・西バルコニーの防水措置と漏水による木部腐朽、同雪害による手摺廻り腐朽、煙突廻りの納まりと漏水、亜鉛板葺の軒先の破損など。内部では、春慶塗及びワニスの劣化とその傾向、天井及び壁のプラスター塗の劣化状況、カーテン・絨毯などの劣化状況、床の不陸状況など。とくに活用にともなう設備類については、暖房の隠蔽配管、誘導灯の設置方法、補助照明の器具と取り付け位置など。活用については、館内一室に揚床で設けた便所の設け方、小屋裏の用い方、不採用古材の整理・保管あり方など。 2 その他全国の修復事例については、情報収集しつつ、以下のように現地調査を実施した。旧札幌農学校演舞場、旧函館区公会堂、旧西田川郡役所、旧群馬県衛生所、旧門司三井倶楽部を現地調査。その他予備調査として旧日本郵船小樽支店、旧済生館本館、旧山形師範学校本館、旧学習院初等科正堂、碓井峠鉄道施設丸山変電所、旧福岡県公会堂貴賓館、旧松本家住宅を、また参考調査として近年の修理あるいは現在修理中の物件(旧鶴岡警察署庁舎、旧下野煉瓦製造会社、広島カトリック教会世界平和記念聖堂、門司港駅舎)を現地調査。 3 各地の保存修理事業の要請に応じた指導助言、建築学会・建築士会・他大学における講演など、研究の研鑽と成果の普及をはかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の対象の中心である豊平館保存修理事業の年度工事の着手がやや遅れたため、それまでの間、豊平館の調査の準備を進めるとともに、全国の保存修理事例の情報収集をおこない、情報の揃った物件から先行して現地調査を始めた。また、それらに近在する、保存修理が近年実施された物件や、現在保存修理実施中の物件も併せて参考に調査をおこなった。 豊平館自体の調査は、7月頃から本格的な作業が始まり、作業の進捗に沿って調査を実施した。現場の観察、これまでの維持修理及びメンテナンス関係資料の収集、現在の工事関係者との意見交換、昭和期の保存修理関係者やこれまでの運営関係者へのヒアリングをおこなった。 豊平館の調査から得た知見の分析・考察により、成果の整理を進め、これと平行して事例調査も実施したので、その点では順調に進展して次年度に進めることができる。なお、豊平館の現在実施中の保存修理の事業の遅れにともなってやや不足した部分は、新たな情報や補足すべき調査に含んで次年度に継続させるものとする。
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今後の研究の推進方策 |
1 豊平館の調査は、前年度からの継続で資料収集とヒアリングを実施し、今年度にある実施中の保存修理の解体調査結果のまとめと実施設計の状況を探り、これまでの調査で問題となった部分をより深く検討し、それらの成果をいったんまとめる。 2 前年度に引き続き、全国の保存修理事例の情報を収集しつつ、各地の事例の調査を実施する。それらの成果を順次整理していく。 3 豊平館の調査による成果及び各地の事例調査による成果をいったん整理し、研究の中間報告と今後の検討を目的に、研究会を開催する。研究会の会場は、いずれかの現地または保存修理現場を選び、研究協力者の参加を中心に、公開で実施する。 4 最終年度(平成27年度)は、1と2の継続により成果をさらに整理してシンポジウムを開催し、補足調和をおこない、まとめとする。
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