本研究は,ロサンゼルスにおける近代建築の形成及び発展過程に関する研究として,ロサンゼルス近代建築を先導した建築家ルドルフ・M・シンドラーやリチャード・ノイトラらの建築思想ならびに建築作品の特質の析出を企図する検討の一部である.特に彼が1954年に著した『Survival Through Design』は,彼のそれまでの建築活動,「ほぼ人生に相当する(almost a lifetime)」ものを総括し,自身の建築思想を「survival」というタイトルのもとに示したものであり,フランス,ドイツ,イタリア,そしてスペインでも訳出された彼の主著とされる.本研究は,ノイトラの『Survival Through Design』に示された全論考を対象に,主題となる言説を抽出し,その主題のキーワードをいくつかの項目として構造化し,これらを主題の内容の階層構成という視点で分析した.これにより48章から1267の言説が主題として抽出され,それらの主題に基づくキーワードは61の項目に整理され,主題の内容を意味の階層性の視点から検討した結果,全体では,第1から第5水準の項目に分類された.中でも,第1水準としては,「時代認識」,「生理学的空間(biological space)」,「建築家としての職能」の3項目が導かれたノイトラの『Survival Through Design注15)』に示された【時代認識】は,《環境》,《文明》,《様式》,《構築》,そして《美しさ》の5項目の第2水準の項目から構成されている.特に本研究ではその主題の一つ,彼の時代認識に関する思想の特質を環境と文明という視点から検討した.
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