研究課題/領域番号 |
25420686
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐久間 昭正 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30361124)
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研究分担者 |
三浦 大介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90708455)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気緩和 / 第一原理計算 / 磁気異方性 |
研究実績の概要 |
我々はKambersky やGilmore等によるトルク相関法をもとに、ギルバート緩和定数αの第一原理計算プログラムを作成し、スピントロニクス物質のαを第一原理計算によって評価してきた。トルク相関法に基づく計算の結果、FeNiやFeCo合金のαについては実測値の半分程度の値が得られたが、ハーフメタル性を示すホイスラー合金のαの値は測定値の1/10程度の値に留まり、実測値との大きな差が認められた。また一方で、Ebert等やStarikov等はスピン相関法を基にαの定量評価を行っている。従って、我々が行ったホイスラー合金のαの計算結果の妥当性を検証するためには、トルク相関法とスピン相関法が理論的かつ定量的にどのような関係にあるかを明らかにしておく必要がある。そこで、平成26年度はこれまでの提案された理論の相互関係を定量レベルで明らかにすることで、ギルバート緩和に関する統一的記述を目指すこととした。 検討の結果、スピン相関モデルとトルク相関モデルの関係に関して以下のことが結論された。1.トルク相関モデルによるαには、バーテックス補正の効果が小さい。また、グリーン関数に用いる正の微小量 にも殆ど影響されず、ほぼ正確なαを提供する。2.スピン相関モデルでは、保存則を満足するためバーテックス補正項の考慮が不可欠であり、その際微小量δの数値的影響が大きいことを考慮する必要がある。3.数値精度を確保した計算によって両者の結果が一致に向かうことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究から、トルク相関法で計算したホイスラー合金のαは理論的・定量的に妥当性を有するものであることが明らかになった。また、スピン相関法に比べてトルク相関法は数値計算上きわめて優位な方法であり、今後用いるべき手法としてトルク相関法がより有効であることも分かった。ただし、理論の出発点としてはスピン相関法の立場がより本質的であることも明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで構築したトルク相関法に基づく計算技術を用いて、磁気異方性が大きいMn系合金など種々の遷移金属合金のギルバート緩和定数αの定量評価を行い、実測値との比較、組成比や規則度そして磁化の非一様運動の影響などを明らかにする。また、同じ手法から磁性多層膜などの磁気的不均一系のαの評価を行い、スピンポンピング機構による磁気緩和定数の定量評価を行っていく。
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