研究課題/領域番号 |
25420688
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
古谷野 有 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00215419)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 窒素オーステナイト / 窒素鋼 / 熱処理 / 電気抵抗 / 組織観察 / TTT曲線 |
研究概要 |
オーステナイトの等温変態曲線は鋼の熱処理条件を検討する際の基礎データである。オーステナイト鋼のマルテンサイト変態温度(Ms)は、格子間にある炭素や窒素の増加とともに低下する。炭素鋼では固溶限におけるMsが室温より若干上であるため、オーステナイト単相を室温に取りだすことは現実的ではないが、窒素鋼については固溶限が炭素より1%程度高く、単相試料を室温に取りだすことが出来るので電気抵抗でC曲線を詳細に調べることが出来る。本研究では電気抵抗測定と組織観察を組み合わせ、窒素オーステナイトを室温に取り出せる共析組成から固溶限までの等温変態挙動を明らかにすることが目的である。 今年度は主に電気抵抗測定装置の改良を行なった。測定ソフトをLab Viewで書き直した。TTT曲線の測定、特にノーズ温度である400℃以上で測定するには、電極を取り付けたオーステナイトを室温から目的温度まで瞬時に昇温しなければならない。管状炉では昇温速度が不足するので本研究ではソルトバスを使った。ところが、500℃付近から使う塩化物ソルトは腐食性が強く、短時間で電極線が切れてしまうため実験は難航した。試料をソルトの深くに沈めれば試料の腐蝕は少なくできるが、電極線はソルトの表層を通るため鉄線、ニッケル線、パラジウム線、金線のいずれも短時間で断線した。当該温度域で使えるソルトは塩化物以外にないので、加熱した真空炉に試料を装填する方法を試したが電極線は無事でも昇温速度が大幅に不足した。そこで、窒素ガス雰囲気で熱処理できるソルトバス炉を開発し、純鉄の電極線でも安定した測定を可能にした。本年度は過共析鋼の測定を行った。ノーズより高温ではFe4Nが粒界と粒内に析出し、母相の窒素濃度が減少してから共析変態してラメラ組織になることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初計画は過共析組成の窒素オーステナイト単相試料を作製し、制御ソフトをLab Viewで書き直し、電気抵抗でCカーブを測定する、である。中高温用ソルトの腐食性が想像以上に激しく、気液界面近傍で電極線が短時間で切れてしまうのは想定外だった。様々なデザインのソルトバスの試作と失敗を繰り返し、窒素ガス雰囲気で熱処理するシステムを完成させ、電気抵抗によるTTT曲線の測定を行っているので、おおむね順調に進んだと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
窒素ガス雰囲気ソルトバスの開発成功により抵抗変化で共析変態を捉えることはできたが、抵抗変化が小さいFe4Nの析出を捉えるには電子計測系を更新してS/Nを良くする必要があるので、その方向の検討を進める。 過共析鋼のC曲線測定は当初計画通りに進めば26年度の半ばまでかかると考えている。それが終わったら、共析オーステナイトのC曲線測定と、組織観察などの測定を始める。共析組成は、マルテンサイト変態温度の関係で、室温までオーステナイト単相を取り出せる限界の組成であるが、単相試料を作製できる条件がわかったので、過共析の測定が終わり次第着手する。 27年度には脱炭したφ10mmの軟鋼棒の表面に窒素オーステナイトを生成させ、得られたC曲線に基づいて熱処理することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
筑波大学では支払いベースで報告することとされており、3月中に予定どおり執行したが、4月の支払いとなったため、繰越金が発生した。 繰越金については、前年度中に執行済みで4月に支払われる予定である。
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