前年度までの研究を継続し,先進電子顕微鏡法およびカソードルミネッセンス「その場」計測法により蛍石型酸化物中の酸素欠陥挙動の基礎的理解を発展させた。 (1)セリア中のイオントラック構造に関する研究を進め,イオントラック構造を空孔に富んだコア領域の周辺を多量の格子間原子を含む領域が取り囲む二層構造として捉える新しいものモデルを提案した。 (2)イオントラックの構造は入射イオンの電子的阻止能値に依存することを明らかにし、フレネルコントラストの形成効率ならびに回復影響領域が電子的阻止能の低下と共に低下することを蓄積過程のモデリングにより示した。 (3)立方晶安定化ジルコニア中のイオントラック構造を観察し、ジルコニア中のイオントラックはセリアに比べて形成効率および中心領域サイズ共に小さいことを明らかにした。 (4)立方晶安定化ジルコニアに200 keVから3 MeVまでの幅広いエネルギーの電子を照射しながら「その場」観察実験を行い、電子エネルギーおよび照射温度に依存して酸素イオン格子間型ループと完全転位ループの2種類の欠陥照射が,相互に作用しながら形成・成長することを見出した。
|