研究課題/領域番号 |
25420694
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 横浜創英大学 |
研究代表者 |
小島 謙一 横浜創英大学, 教育学部, 教授 (90046095)
|
研究分担者 |
若生 啓 横浜創英大学, 教育学部, 講師 (40515839)
橘 勝 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (80236546)
小泉 晴比古 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10451626)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | X線トポグラフ / 転位 / 格子欠陥 / タンパク質結晶 / 結晶の強度 / 結晶の脆性 / 結晶塑性 / 結晶の弾性 |
研究概要 |
平成25年度の研究はKEKPFの放射光トポグラフのラインに本年度の科研費により組み立てられた加圧装置を製作することが第一とした。今まで我々はタンパク質結晶の強度を微小ビッカース硬さによって測定し、タンパク質結晶も塑性変形することを確かめた。しかしながら、その変形の機構は転位によるものとそれ以外のもがあり、明らかになっていない。また、弾性定数は金属結晶の数百分の一であるにも関わらず、脆く、その強度は結晶水に強く依存することを突き止めた。このように、タンパク質結晶の強度は塑性と脆性(破壊)の両面から研究する必要がある。そこで塑性と脆性(破壊)の機構を解明するためにタンパク質結晶に応力を加える装置を開発により、我々が開発してきたデジタル放射光X線トポグラフによって実験を行うことにした。 平成25年度前期にx、y、zの3軸に移動できるx-yステージを用いて、z軸方向(垂直)に毎秒数mmの速度で移動可能な針により、タンパク質結晶に応力を加える装置の設計を行った。平成25年度後期にこの加圧装置を完成させ、実際にタンパク質結晶に針によって応力を加える実験を行い、この装置が正常に稼働することを確かめた。その後、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリ(KEKPF)の実験ラインに乗せその性能を確かめることを行った。使用した試料は正方晶卵白リゾチウム結晶をもちいた。1-3mm角の大きさの単結晶をポリエチレン・ストローの中に飽和溶液に接触させるように保持した。この結晶に、作成した加圧装置によって連続的に荷重を加え、デジタル放射光X線トポグラフ法により、連続的にイメージを取ることに成功した。 もう一つのタンパク質結晶の分子間ポテンシャルの計算機シミュレーションについては、計算量が多いので並列計算機用にプログラムの開発を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に達成したことは以下のとおりである。研究実績の概要で示したように、①タンパク質結晶に応力を加える装置の設計と製作。②高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリ(KEKPF)の実験ラインに乗せその性能の確認。③正方晶鶏卵白リゾチウム結晶に加圧装置によって連続的に荷重を加え、デジタル放射光X線トポグラフ法により、連続的にイメージを撮ることに成功した。今年度の計画は応力付加装置の作成までを視野に入れていたので、デジタル放射光X線トポグラフ法によりデータが取れたことは次年度の目標であったので、実験に関しては、当初の計画より進展していると判断した。 ただし、試料に荷重がかかる状況を連続的にCCDカメラで追跡する光学システムは、システムに最適なカメラと記憶装置の評価に時間を要したために、次年度に繰り越すことにした。 分子間ポテンシャルの計算機シミュレーションについてはプログラムの開発を進めているがまだ十分な成果は得られていない。 それゆえ研究全体を自己評価するとほぼ計画通りであると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
加重を加える装置を使い、デジタル放射光X線トポグラフ法により連続的にデータが取れることが判明した。そこで今後は予定通り、転位の増殖と運動、結晶のクラック発生の機構などを時間の関数として観測することを中心に研究を発展させる。このために、今まで試みてきたビッカース硬さ試験機によるタンパク質結晶の圧痕周囲の変形状態を放射光デジタルトポグラフによって引き続き調べる。さらに、現在、荷重をかけるためにミシン針を使用しているが、これを微小ビッカース硬さ試験機用のダイアモンド圧子を特注してさらに精度をあげた実験を行う。 これとは別に、放射光X線トポグラフ像と実際に荷重のかかっている結晶の状態を同時に観察するために、結晶に荷重がかかる状況を連続的に測定できるシステムをCCD光学カメラと記憶装置によって測定する。このために高速演算できるパソコンを使って、リアルタイムで放射光X線トポグラフの解析ができるシステムを構築する。 また、タンパク質分子間ポテンシャルの計算機シミュレーションはプログラムの開発を引き続き行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究の達成度のところで述べたように、試料に荷重を加えている状況を連続的に光学CCDカメラで追跡する光学システムを作製する予定であったが、システムに最適な光学CCDカメラの調査に時間がかかってしまった。すなわち、KEKのハッチ内に放射光が発生中に、外からリモートコントロールすることに依ってピントを合わせるシステムを作るために、光学CCDカメラとリモートシステムとの組み合わせに時間を要した。このために、平成26年3月までに発注することができなかった。また、デジタル放射光X線トポグラフ法によって得られたデータと光学CCDカメラのデジタル像をなるべくリアルタイムで観察できるシステムにするために、処理機能の高いパソコンの選択をすることが必要である。しかし、光学CCDカメラの選定ができなかったのでパソコンの購入も次年度に繰り越すことになった。 平成26年度は前述の理由のとおり、平成25年度に購入できなかった、光学CCDカメラとその制御装置一式を購入する予定である。また、デジタル放射光X線トポグラフのデータ解析と光学CCDカメラのデータとの調整をおこなうパソコンを購入する予定である。加えて、現在使用している加圧部分の針を微小ビッカース硬さ試験機用のダイアモンド圧子に替えるために、それを特注する予定である。その他としては学会発表のための旅費、鶏卵白リゾチウム試料や消耗品を購入する予定である。
|