研究実績の概要 |
本研究では、多様な化学結合をもつ各種金属化合物(ホウ化物、炭化物他)の化学結合を、「原子化エネルギー」を用いて表現し、いろいろな金属化合物をすべて同一の原子化エネルギーの視点から捉え直した。それを基に非金属元素側からの「量子材料設計基盤」を構築し、新規な「自動車用水素貯蔵化合物」の探索に応用することを目指した。以下の結果を得た。 3d遷移金属M(Ti, Cr, Fe)の各種化合物(ホウ化物、炭化物、窒化物、酸化物、フッ化物、硫化物)について、構成原子の原子化エネルギーを決定し、原子化エネルギー図を作成した。ホウ化物、炭化物、窒化物では、金属元素(M)の組成比率が高くなると、非金属元素X(=B,C,N)と金属元素(M)の原子化エネルギーは共に増加する。しかし、酸化物ではこれらとは違い、金属元素(M)の組成比率が高くなると、酸素(O)の原子化エネルギーは減少し、金属元素(M)の原子化エネルギーは増加する。一方、フッ化物では、原子化エネルギーは組成に対して酸化物と正反対の変化をする。硫化物では、原子化エネルギーの組成依存性は、金属元素(M)によって変わる。金属元素(M)の組成の外に、原子化エネルギーは、原子間距離、密度とも相関がある。このように、これまで個別に研究されることが多かった金属化合物を、同一の原子化エネルギーの新しい視点から見直した。 これらの成果を基に、非金属元素側からの量子材料設計のための基盤を構築した。この方法を水素貯蔵化合物の探索に応用し、ホウ素(B)を含む新規な水素貯蔵材料の設計を試みた。ボールミリング法などを用いて3成分マグネシウム化合物を作製し、水素貯蔵材料の探索のための新しい設計指針を得た。
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