研究の前半では、アルカリドープ・フラーレンナノウィスカーの線材化を目指して、最適な加熱温度と加熱時間等について検討し、それまで報告されていなかった、短時間(24時 間程度)で80%以上の超伝導体積分率を実現することができ、論文・新聞・雑誌等で発表してきた。後半の研究では、フラーレンの軽量性を超伝導線材へと応用するための基礎研 究を行うことを目標とした。一番の問題はアルカリ金属の反応性が高いためそのままでは空気中で不安定であることである。そこで、コーティング法を検討しアルカリ金属と反応せずかつ酸素を透過させないような剤を探したが、酸素を通さない最適コーティング材料は見つからず引き続き探しているところである。28-29年度は、熱処理時間の検討を行い、前半で行っていた固相拡散反応法から、液体アンモニアにアルカリ金属を溶解させてフラーレンと反応させる方法を採用することによって以前の200度24時間程度の時間から200度10分以下の反応時間、1/100の反応時間の短縮に成功した。また、シース材に充填して線引きし、超伝導線材としての材料特性を測定することを最終テーマにした。平成29年度の継続研究によって、他予算によって臨界電流密度測定装置を立ち上げ後、カリウム添加フラーレンナノウィスカーを4端子法により評価測定し、その結果を国際低温学会(イエテボリ、スウェーデン)で報告した。本研究では基本的なプロセスの検討、キャラクタリゼーションは行うことができた。今後、実用線材レベル達成に向けて、粒界結合の問題等、更なる研究が必要である。
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