研究課題/領域番号 |
25420700
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
平賀 啓二郎 北見工業大学, 工学部, 教授 (80354190)
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研究分担者 |
森田 孝治 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (20354186)
金 炳男 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (50254149)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超塑性 / 高ひずみ速度 / ジルコニア / 分散相 / 粒界損傷 / 微視き裂 / 破断 |
研究実績の概要 |
本年度は、3モルY2O3安定型ZrO2(Y-TZP)に弟2相としてSiO2ないしスピネルを分散させ、高速超塑性変形における引張破断ひずみや変形の下限界温度に対してこれらの第2相分散が及ぼす効果を、粒界損傷の発生成長・合体に着目して検討した。前年度の検討により、高ひずみ速度下では、超塑性変形自体の可否や変形の持続性が焼結材中の微小な粒界欠陥に強く依存すること、したがってドープ効果の検討には純3Y-TZPとドープ材の微小粒界欠陥をほぼ同レベルで低減させることが必要なこと、さらにその手法として常圧2段焼結が有効なことが見出された。これより、本研究でも2段焼結法によって粒形と焼結密度(≧99.0%)を制御し、分散相の量比を変化させて検討した結果、以下の知見を得た。 (1)SiO2分散:Siの粒界偏析のみを生じた微量添加材ならびに6~26vol%のSiO2相分散材を検討した。>2E-3/sの高ひずみ速度におけるSi偏析およびSiO2分散の効果は、ひずみ速度が1E-4/sの通常超塑性域に関する既往知見とは異なり、SiO2分散によって破断延性が減少する場合、ほとんど変化しない場合、増大する場合の3通りがあり、この効果には速度や温度に対する強い依存性があることが明らかとなった。また、高応力が付加される変形条件(より低温ないし高ひずみ速度)では、SiO2相の分散は破断過程を促進することが見出された。 (2)スピネル分散:反応焼結法によってMgO・Al2O3系スピネルを微細粒3Y-TZP中に生成・分散させた材料を対象とした。その結果、本担当者等や他の既往研究未検討であった1500℃以下の温度域では、この粒子分散が粒界損傷の発生を促進することが見出された。また、破断は粒界損傷の発生-成長-き裂化で起こり、そのき裂化の条件は延性材料中のボイド合体モデルで説明できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高純度の3Y-TZPに第2相を分散させた系を高ひずみ速度域(ひずみ速度2E-3~5E-2/s)で検討の結果、通常超塑性(ひずみ速度が1E-4/s)に関する既往研究で得られているものとは明らかに異なる挙動が見出された。既存知見からの予測とは別の新知見を得ており、研究進展は順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.当初計画に従って、組成制御した分散粒子ならびに第3相までを含む複合系を対象として検討を進める。 2.純3Y-TZP、ドープ材、粒子分散の各形と比べて、左記各系の要素を重畳して持たせた複合系(弟3相分散系)の特徴を明らかにしていけるものと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該分は、高温超塑性試験で顕著な酸化・変形損耗を受けるSiC製治具(下部接続治具136千円および試料掴み部一対200千円)の更新に充当の予定であった。しかし変形・損耗の程度が使用可能な程度に留まったことから、年度内の更新を見送り、当該額を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に見送ったSiC製治具の更新に用いる。もし左記治具の一部が継続使用に耐えられる場合はそのまま使用し、差し引き分を超塑性試験片の追加加工に充当する。
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