研究概要 |
アルカリ土類金属を含む新規多元系窒化物の探索として、本年度はNaフラックス法によりBa-Ga-Si-N系の4元系で合成される化合物を検討した。その結果、新規化合物Ba4GaN3Oが見い出され、その結晶構造を明らかにすことができた。 原料としてBa、Ga、およびNaの金属片とSiとNaN3の粉末を用い、これらをArガス雰囲気のグローブボックス内で所定量秤量し、BNルツボに入れた。これをステンレス鋼製(SUS)管に封入し、電気炉で750℃まで6℃min-1で昇温後、550℃まで2.8℃h-1で冷却した。グローブボックス内でSUS管を開封し、ルツボ内のNaを液体アンモニア中に溶解して除去した。得られた試料中には、Ba3Ca2N4の黄色単結晶が主相として存在し、0.1~0.2mmの暗赤色板状の単結晶が第2相として得られた。走査型電子顕微鏡に装置したエネルギー分散型X線分光分析装置を用いて半定量の元素分析を行った結果、この暗赤色単結晶中にはBaとGaが存在し、原料に加えたSiは含まれていないことが示された。グローブボックス中で生成物から単結晶を拾い出し、ガラスキャピラリーにArガスとともに封入後、X線回折実験を行った。測定された回折線は斜方晶系a=0.78130(3)nm, b=2.56453(10)nm, c=0.79162(4) nmで指数付けされ、消滅則から空間群がPbcaであることが示された。 結晶構造解析の結果、単結晶はBa-Ga-N-O系でこれまでに報告がない化合物のBa4GaN3Oで、その構造はMallinson et al., (2006)が報告したSr4GaN3Oと同型であることが明らかになった。GaがN原子により平面3配位された[GaN3]の窒化物基の周りをBa原子が取り囲んだ[Ba4GaN3]の厚板層がa-c面内に形成され、その層間にO原子層が挟まっている。
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