アルカリ土類金属元素や希土類元素、ケイ素などを含む多元系でナトリウム(Na)フラックス法により新規窒化物の合成を試み、得られた物質の結晶構造や結晶化学的特徴を明らかにすることを目的とした研究を行った。 初年度、Ba-Ga-Si-N系で探索を行ったところ、Ba3Ga2N4単結晶が主相として、新規化合物Ba4GaN3Oの単結晶が第2相として得られた。X線回折法による結晶構造解析で、Ba4GaN3Oが既報のSr4GaN3Oと同型構造であることを明らかにした。 次年度は、Gaと同じ3価のYやLaとの組み合わせで合成を試みた結果、LaNやYNなどの2元系窒化物が生成し、3系以上の窒化物は得られなかった。そこで、Naフラックス中でのBa、LaとSiの反応性を検討したところ、BaLaSi2とBa5LaSi6の2つの新規化合物の単結晶が合成された。また、Laとルツボ材のBNとの反応でLaのホウ化物が生成し、その際に放出されたNやBとBaとの反応で新規化合物Ba26B12Si5N27が合成された。 最終年度は、新規化合物BaLaSi2とBa5LaSi6の結晶構造解析結果を基にSiのジントルポリアニオンの化学結合を分子軌道法で検討し、導電率や電気抵抗率などの特性評価を進めた。また、Ba26B12Si5N27の構造解析結果の妥当性や、構造内に存在が示されたSi-Siの2量体の原子間距離とその化学結合について、アーヘン工科大学のR. Dronskowski教授と国際共同研究を行った。X線結晶構造解析と理論化学計算の結果は、いずれもSi-Siの形式結合次数が2.60で3重結合に近いことを示した。このようなSi-Siの多重結合が無機固体結晶で明らかにされたのは、本研究が初めてである。この他、新規多元系窒化物Ba (Ba0.99Eu0.01)Al3Si4N9の結晶構造を解析し、蛍光発光特性を評価した。
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