研究課題/領域番号 |
25420707
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松下 祥子 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50342853)
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研究分担者 |
松谷 晃宏 東京工業大学, 技術部, 技術職員 (40397047)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 反応性イオンエッチング / 酸化チタン / 電解液 / フォトニック結晶 / 屈折率 / 誘電率 / 太陽電池 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、光の半導体と呼ばれるフォトニック結晶を、光化学反応へ応用することを試みている。そのためには、光を照射すると酸化・還元が行える光触媒材料、TiO2からなる、完全に光を閉じ込めるコンプリートフォトニックバンドギャップ(PBG)を持つフォトニック結晶の作製が望まれる。 昨年度までに、我々は、計算により、四角柱が井桁に載せられたような構造体、ウッドパイル型構造体のような3次元フォトニック結晶であれば、ある波長域において酸化チタンもPBGを発現することを明らかとした。そのようなウッドパイル型構造体を作製するにあたっては、傾斜エッチング技術が必要であった。 そこで、Nbがドープされ光電流の得やすい(001)Nb-TiO2の反応性イオンエッチングによる微細加工条件を検討し、同材料の傾斜エッチングに成功し、まずは2次元フォトニック結晶を得た。そして赤外域での光学特性を測定し、理論計算から得られたPBGの位置と測定値が一致することを示した。 今年度は、この傾斜エッチングを数方向から行い、3次元フォトニック結晶を作製した。特に、可視光波長対応の電気化学フォトニック結晶を作製し、その色素増感型太陽電池への組み込みを行う予定であった。 しかしながら、確かに傾斜エッチングを組み合わせることで3次元フォトニック結晶を作製できたが、深さ方向はわずか数マイクロで十分なPBGを持つとは言えず、面積も電気化学測定に必要な1 mmφには到達できていない。これは、当方で有する装置の限界であり、現在の装置では目的とする電気化学フォトニック結晶が作れないことが明らかとなった。 そこで今年度は、ウッドパイル型構造に囚われず、様々な3次元構造体を作製する技術について検討した。特に、リソグラフィー技術と自己集積を組み合わせ、これまでにない新しい構造体を作製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績概要でも書かせていただいたように、現有設備では、計算上発見できた酸化チタンのウッドパイル型構造が作れないことが判明した。このままでは、酸化チタン単結晶上へのリソグラフィーによる電気化学フォトニック結晶の作製が行えないこととなり、最終的な目的である「フォトニック結晶の光電気化学反応への効果」が明らかにできない。 今年度、ボトムアップ技術を組み込みながら酸化チタンのナノファブリケーション技術を積み上げ、ナノ構造作製のブレイクスルーを行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
上述させていただいたように、申請書執筆段階では最終年度に電気化学フォトニック結晶の電気化学測定を行う予定であったが、現有設備でのナノファブリケーションの限界に当たり、肝心の構造体が電気化学測定に十分な大きさでは作製できていない。 深堀エッチング等の装置を、もしも酸化チタンでも使用できるのであれば、これまで同様リソグラフィー技術のみで研究遂行が可能であろう。だが、残念ながら通常のリソグラフィー装置はSiエッチング専用のチャンバーであり、酸化チタンなどの他の材料のエッチングによりチャンバーに不純物が混じることは通常許可されない。このままリソグラフィー技術のみで酸化チタンのPBG構造を「広い面積で」作ることは不可能であると判断した。 そこで今年度は、ボトムアップ技術を組み込みながら酸化チタンのナノファブリケーション技術を積み上げ、ナノ構造作製のブレイクスルーを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は、実施報告欄で書かせていただいたように、年度途中に酸化チタン単結晶上へのリソグラフィーを断念した。すなわち、平成26年度に計上させていただいていた酸化チタン単結晶60万円分の約半分30万円ほどがその段階で未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、研究計画を、ボトムアップと組み合わせたリソグラフィーにすることにより、酸化チタンナノファブリケーションのブレイクスルーを測る。 そのために、Si基板・ボトムアップ用試薬の購入に使用する予定である。
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