研究課題
都市生活を営む上で直流-交流変換などの電力変換は必要不可欠である。現在、Siパワーデバイスを用いた電力変換システムが広く普及しているが、変換効率が悪く約10~20%のエネルギーを熱として損失している。本研究では、電力変換の高効率化に資する次世代パワーデバイス用窒化アルミニウム(AlN)結晶の作製技術開発を目的とした。AlN結晶は従来のSi結晶よりも高耐圧、低オン抵抗を実現できる材料であり、この材料を用いたパワーデバイスを開発することにより電力変換損失を5%程度にまで低減することが期待される。本研究では(1)高温固-液界面のその場観察を可能とする特殊な溶液成長炉の開発、(2)溶液成長プロセスの解明と新規AlN成長技術の開発を行った。(1)では、成長炉底面に石英の観察窓を設置し、その直上に置かれた無色透明のAlN/サファイア基板を通して、高温溶液と基板表面との界面(高温固-液界面)の観察を可能とした。炉内の基板保持台や断熱材の形状を改良することで観察窓周辺部からの放熱を抑制し、当初予定していた基板表面温度に達することができた。結果として高温固-液界面のその場観察に成功した。また、基板表面に置かれたAl粉末の融解を観察することにより、基板表面と熱電対位置(基板直上10 cmの位置)の温度差を評価した。温度差は40℃となっており炉内鉛直方向の温度勾配が4℃/cmとなっていることがわかった。この縦型温度勾配炉を用いて熱電対温度1250、1350℃におけるAlN固体ソース溶液成長を行った。低温(1250℃)ではデンドライト成長(樹脂状成長)様式が観察され、高温(1350℃)では多段ステップの移動(ステップフロー)による成長が観察された。本研究により、高温固-液界面のその場観察技術の開発およびAlN固体ソース溶液成長プロセスの解明に成功した。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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