研究課題/領域番号 |
25420716
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
岡田 繁 国士舘大学, 理工学部, 教授 (40191952)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルミニウムマグネシウム22ホウ化物 / アルミニウム自己フラックス / 金属マグネシウム / フッ化マグネシウム / 格子定数 / 磁化率 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究ではAlMgB22(斜方晶系)結晶は、Al自己フラックスを用いて、出発原料を金属マグネシウムMg或いはフッ化マグネシウムMgF2と結晶性ホウ素Bとの反応から得られることを報告した。合成条件は、アルゴン雰囲気中で、所定の加熱温度900~1400℃、5時間保持、徐冷速度50℃/hである。しかし、その条件ではAlMgB22以外にAlMgB14も一緒に生成する。そこで、出発原料のMg或いはMgF2とBを用いて検討した。原料の原子比B/Mg = 0.5-4.0の範囲で、加熱温度1400℃で、AlMgB22を単相で得る方法を調べた。その結果、原料のMgとMgF2ともB/Mg = 0.5と4.0ではα-AlB12結晶が主体で、AlMgB22の生成が少なかった。しかし、B/Mg = 1.0-3.0ではAlMgB22とAlMgB14の混合相で得られ、それらの生成割合はほとんど変わらなかった。B/Mg = 2.0ではAlMgB22とAlMgB14の共存で生成していたが、AlMgB22の方がやや多く生成していた。そこで、B/Mg = 2.0で加熱温度を1200~1300℃ではAlMgB22結晶の大きさは小さくなり、AlMgB14との混合相として得られた。1100℃以下では結晶が生成しなかった。以上から、AlMgB22を得る条件は、B/Mg = 2.0、加熱温度1400℃、5時間保持であった。AlMgB22とAlMgB14からそれぞれの結晶を選別して、X線回折計を用いて格子定数を測定した。AlMgB22の格子定数は、a = 1.663(4)nm, b = 1.756(5)nm, c = 1.017(5)nmであった。また、SQUIDマグネットメーターで室温から2 Kまで磁化率を測定した。その結果、AlMgB22は、超伝導が観測されなく、不純物効果による特異な挙動も示さなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al自己フラックスでAlMgB22結晶を得る条件では原料として金属マグネシウムMg或いはフッ化マグネシウムMgF2を用いるのが最適であった。加熱温度1400℃、5時間保持、徐冷速度50℃/hの条件で、金属Mg或いはMgF2とBの配合比B/Mg = 2.0でAlMgB22結晶を得るために最適であった。しかし、その場合でもAlMgB22結晶はAlMgB14との混合結晶で得られた。特に、原料とし金属Mg或いはMgF2で、配合比B/Mg = 2.0の条件で、大きなAlMgB22結晶を得るためには加熱温度1400℃、5時間保持であった。現在までの研究の達成度ではAlMgB22結晶を単相として得ることができなかった。この理由はAlMgB22結晶が準安定相ではないかと想像できた。上記条件では大きなAlMgB22結晶を得る方法を見出すことができた。AlMgB22結晶はAlMgB14との結晶形態の相違から選別してAlMgB22の格子定数と磁化率の性質を調べることができた。以上が現在までの研究の達成度である。
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今後の研究の推進方策 |
金属Mg或いはMgF2とBの配合比B/Mg = 2.0を用いた場合にAlMgB22結晶を得るためには最適であった。平成27年度では金属MgとBとの反応からAlMgB22結晶を得る条件とこれに軽元素を固溶させたAlMgB22結晶を得る条件の検討を行う。また、MgF2を用いた場合では金属Mgを用いた結晶合成よりも実験装置として使用しているアルミナ炉心管の破損が多かった。これは揮発したフッ素とアルミナとの反応によってアルミナ炉心管が破損したためと考えられる。従って、今後の研究では原料として金属MgとBを用いてAlMgB22結晶の合成に着手することにした。AlMgB22結晶の合成条件が定まったので、これにSc、Li或いはNaの軽元素を固溶したAlMgB22結晶の合成を行う。固溶体AlMgB22結晶を作製したら、それら結晶の格子定数とビッカース微小硬さを測定し、AlMgB22の単体或いは著者らが合成した高ホウ化物と比較して、高硬度材料としての総合的な評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度ではAlMgB22結晶を単相として得るための実験条件を主体的に行った。しかし、AlMgB22はAlMgB14結晶と混合相して得られることが分かった。その場合、大きなAlMgB22結晶を得る実験条件は、配合比B/Mg = 2.0、加熱温度1400℃、5時間保持であった。この条件ではα-AlB12結晶の生成量が少なく、AlMgB14よりもAlMgB22結晶が多く得られるとこが分かった。このようにAlMgB22結晶を得る条件について実験を行ったが、目的の結晶である固溶体AlMgB22を得る条件まで実験を行うことができなかった。その理由で残金として62,470円余ってしまった。今後の実験は、上記の条件を基にしてAlMgB22中にSc,LiやNaなどの軽金属を固溶させた化合物の合成を行う。即ち、AlMgB22構造中のMgの位置をSc,LiやNaの軽元素で置き換えて化合物の合成を行うために平成27年度の予算が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
金属を固溶させたAlMgB22結晶の作製には、原料として酸化スカンジウムSc2O3、四ほう酸リチウムLi2B4O7や四ほう酸ナトリウムNa2B4O7などの金属酸化物粉末が必要である。平成27年度では、原料の金属酸化物と結晶性ホウ素Bを購入するために必要な経費として、前年度に余った62,470円を使用する計画である。具体的には、出発原料としてSc2O3、Li2B4O7やNa2B4O7粉末などの少量と金属Mgを用いて、これらとBとの反応をAl自己フラックス中で行う。加熱温度1400℃、5時間保持、徐冷速度50℃/hの条件で、Sc,LiやNaなどの軽金属を固溶させたAlMgB22結晶を合成し、格子定数、組成比とビッカース微小硬さを測定する。AlMgB22結晶及び軽金属を固熔させたAlMgB22結晶について硬さを比較する。その結果に基づいて、軽元素を固溶したAlMgB22結晶が高硬度材料としての可能性を探索する。
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