研究課題/領域番号 |
25420717
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
竹内 謙 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (80339134)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 貝殻 / 中性子散乱 / 局所構造 / 吸着 |
研究概要 |
ホタテ貝殻を1000ppmの金属イオン水溶液に投入し、撹拌したところ、条件にもよるものの、おおよそ300ppmまで、金属イオン濃度が減少することが明らかになった。このメカニズムを明らかにするために、本研究助成金で平成25年度に購入したX線回折装置でホタテ貝殻の結晶構造を仔細に検討したところ、市販炭酸カルシウムとは局所構造に変化がある可能性が見られた。 そこで、米国エネルギー省Oak Ridge National LaboratoryのSpallation Neutron Sourceにおいて、全散乱測定装置NOMADで、ホタテ貝殻の中性子散乱測定を行った。 (1)粉砕したもの、(2)グラインドしたもの、(3)洗浄したもの、(4)(1)~(3)をそれぞれ金属イオン水溶液内で分散したもの、を用意した。ホタテ貝殻では、右殻と左殻に分けて、(1)~(4)を行った。対照実験として行った市販の炭酸カルシウムに関しては(2)~(4)を行った。中性子散乱測定は各サンプル1つあたり2時間から3時間行い、合計3日間を費やして行った。測定結果から2体相関関数(Pair Distribution Function)を得て、全てのサンプルに関して比較したところ、金属イオン水溶液中で撹拌したものは、C-O、C-C、O-Oの結合距離がそれぞれ長距離側にシフトしており、これらの相関に金属イオンが影響を及ぼしていることが明らかになった。また、溶液内で撹拌する前の(1)~(3)に関しても、それぞれ相違があったが。 一方で、高輝度光科学研究センター(SPring-8)にて金属イオン溶液内で撹拌した(4)のホタテ貝殻と(2)の貝殻と市販炭酸カルシウムを蛍光X線で測定した。これらに関しても、詳細は現在も解析中であるが、軽元素とCかOとの間に相関が見られる可能性が見いだされた。現在、その軽元素を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画では、平成25 年度に、 (1) ホタテ貝殻粉末の粉砕や焼成の最適条件の探索、(2) アルカリ金属類の吸着能力の定量的な解析、を主に行うこととしていた。一方で、平成26 年度には、上記の(1) ~(2) の研究を引き続き続行するとともに、(3) ホタテ貝殻の微視的構造の解析を行い、 (a) 実験室X 線回折( 科学研究費で購入予定)、(b) 高輝度X 線散乱施設(SPring-8) での高エネルギーX 線回折、(c) パルス中性子施設(SNS) での中性子散乱測定を行い、得られた成果をReverse Monte Carlo 法、Pair Distribution Function 法で解析するとしていた。 実際には、平成25年度に、貝殻の焼成条件や粉砕条件を様々に変化させての実験を遂行し、焼成よりも、粉砕の条件によって、大きく金属イオンの吸着量が変化することを見いだした。また、アルカリ金属全般とさらにはアルカリ土類金属にまで手を広げて、金属イオン濃度の変化を測定し、金属イオンによって、吸着するものとしないものがあることを見いだした。さらに、平成25年度中に実験室X 線回折装置を本研究助成金にて購入し、粉砕条件や焼成条件の異なるホタテ貝殻のX線回折を種々行っている。また、平成26年度中に行う予定だった中性子散乱測定や高輝度X線測定も一部を行っている。これらの測定結果に基づいての次の中性子散乱測定を平成26年5月にも行う予定である。このように、若干、初期の実験計画と異なる部分もあるものの、全体を見渡すと、概ね予定通りの進捗と言ってよいと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画通り、平成25年度には、(1) ホタテ貝殻粉末の粉砕や焼成の最適条件の探索、(2) アルカリ金属類の吸着能力の定量的な解析を主に行い、さらに、(3) ホタテ貝殻の微視的構造の解析を行い、(a)実験室X線回折、(b)高輝度X線散乱施設(SPring-8) での高エネルギーX線回折、(c)パルス中性子施設(SNS)での中性子散乱測定を行ってきた。そこで、平成26年度以降は、これも申請時の研究計画通り(1)(2)に関しては、さらに金属イオン種の種類を拡大し実験を行うとともに、詳細な粉砕条件や焼成条件を変化させての実験を行う。また(3)に関しては、実験を得られた成果をReverse Monte Carlo 法、Pair Distribution Function 法で解析する。その一方で、これまでの中性子散乱測定では、軽水素による非干渉性散乱の影響が大きく統計精度が稼げていないため、重水中に金属イオンを溶解させた場合の測定が必要不可欠である。そこで、これも申請に書いた通り、平成26年度の本科学研究費を用いて、重水を購入し、吸着実験を行う予定である。その際には、さらに金属イオンのコントラストを付けるために、散乱強度の異なる同位体金属をも使う予定であり、その準備を実際に現在も行っており、8月には、測定ができる予定である。平成26 年度には主に、NOMAD の測定結果をPair Distrubution Fynction(PDF) 法とReverse MonteCarlo(RMC) 法で解析し、市販の炭酸カルシウムには見られないホタテ貝殻特有の局所構造を解析する。平成27 年度も(1)~(3) の研究を引き続き続行するとともに、(4)吸着機構を解明する。また、この3 年間に得られた結果をまとめて論文誌に投稿し、研究成果を産業界に知らしめる。
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