研究課題/領域番号 |
25420724
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
大西 剛 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80345230)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性セラミックス材料 |
研究概要 |
全固体Liイオン電池の超高出力化を最終目標として、①正極活物質、②高いイオン伝導性をもつ酸化物および硫化物固体電解質、③酸化物負極活物質、④集電体となる導電性酸化物、それぞれのエピタキシャル薄膜化と金属LiおよびLi合金薄膜の形成、最後にこれらを積層することで、エピタキシャル薄膜全固体二次電池を創成する。複酸化物の薄膜化に長けるパルスレーザー堆積(PLD)法を用い、製膜条件の厳密制御によりバルク単結晶品質のエピタキシャル薄膜を得るとともに、原子レベルで連続的なヘテロエピタキシャル界面を作製し超高出力全固体Liイオン電池の薄膜モデルと電池材料界面モデルを作製する。 本年度は酸化物固体電解質Li0.33La0.56TiO3のエピタキシャル薄膜とLiMn2O4を用いた界面研究と新たな酸化物固体電解質としてLi7La3Zr2O12のエピタキシャル薄膜化が目的であった。 まず、酸化物固体電解質Li0.33La0.56TiO3については、高効率かつ高品質は薄膜の作製手法としてPLDにRF励起の酸素ラジカル源を組み合わせることで、高速な堆積速度が達成可能な低酸素分圧下で充分な酸化能が得られ、結果として酸素分子を用いた際と同等なLiイオン伝導度を有するエピタキシャル薄膜の作製に成功した。また、LiMn2O4薄膜については酸素分子である程度の結晶性のエピタキシャル薄膜が得られることがわかったが、Li0.33La0.56TiO3以上に強酸化する必要がわかったため、今後酸素ラジカル源を用いた薄膜作製を行う予定である。また、新規酸化物固体電解質Li7La3Zr2O12についても、酸素ラジカル源を用いてエピタキシャル薄膜の作製に成功したが、Liイオン伝導度は非常に低かった。用いた焼結体ターゲットにおいてもLiイオン伝導度が低く、調査の結果ターゲット自体に大量のCが含まれていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の通り、当初予定していたLi0.33La0.56TiO3、Li7La3Zr2O12のエピタキシャル薄膜化に関しては酸素ラジカル源の導入により高品質高速堆積を達成、LiMn2O4においてもエピタキシャル薄膜化に成功しており、予定以上の進捗が得られているが、Li0.33La0.56TiO3薄膜とLiMn2O4薄膜の界面形成までには至っていない。 その一方で、本年度以降に予定していた新規集電体としての電子伝導性酸化物、LaNiO3のエピタキシャル薄膜化を前倒しで成功した。しかしながら、格子定数的にLiCoO2とのミスマッチがより大きい基板上でしか高品質な薄膜が得られないことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
Li0.33La0.56TiO3又はLi7La3Zr2O12を固体電解質層、LiMn2O4を活物質としたプラナー型の電池の試作を行う予定だが、それとは別に非晶質の酸化物固体電解質であるLi3PO4、LiPON薄膜のスパッタ装置による大量生産を確立させる。これにより、活物質薄膜の評価と硫化物固体電解質との界面修飾が可能になり、研究速度の飛躍的な向上が期待できる。 また、薄膜型電池を作製する上で必須となる高容量負極としての金属Li薄膜の作製にも着手する。バルクの金属Liはドライルームでも扱えるため、比較的安定な材料と考えられがちだが、これはバルク表面に不動態層があるためで、PVD法により薄膜化すると薄膜表面には不動態層がなく、非常に活性が高い。Ar雰囲気のグローブボックス内で抵抗加熱真空蒸着装置でLi薄膜を得ているが、Ar雰囲気に薄膜を暴露すると短時間で金属光沢面が失われ、白色、赤色化する。赤色はLi3Nによるものと考えられる。グローブボックス内の雰囲気は循環精製装置により酸素と水を強力に取り除いているが、窒素は取り除くことができないが、そもそも窒素はグローブボックス内に入ってくることはないと考えていた。差動排気した四重極質量分析装置をグローブボックスに設置して常時モニターをしたところ、窒素に限らず酸素、水もグローブを透過して侵入していることがわかったため、これを解決すべく装置改造等を行う予定である。
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