研究課題/領域番号 |
25420727
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小長谷 重次 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30418785)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラフェン / 導電性高分子 / 複合材料 / 導電性 / 透明性 / 透明導電膜 / フェノール / PEDOT |
研究実績の概要 |
ドーピングされた導電性高分子(ポリアニリン(PANI:DBSA), スルホン化ポリアニリン(PAS), ポリチオフェン(PEDOT:PSS))と酸化グラフェン(GO)との複合体の導電性及び透明性に与える熱処理効果につき詳細に検討した。熱処理温度が150~200℃で導電性は著しく向上するが、透明性の向上は見られない。さらにPANI:DBSA/GO複合体系の熱処理による導電性向上がPANIとGOとの相互作用に起因するかを詳細に検討したが、明確な結論は得られず、来年度さらに検討を加え、メカニズムを解明する。 この2元系にポリエステルやポリビニルアルコールなどの高分子バインダーを混合することにより透明性は向上するが、導電性が著しく低下する。また、セルロースナノファイバーの添加は導電性向上に寄与するが透明性は改善されない。 透明性不良はGO粒子の大きさ(数ミクロン)に起因するので、GOに代えてGO類似体である特定の構造を有する多環状フェノール化合物を用いて導電性高分子の導電性向上につき検討したところ、特殊なフェノール化合物がPEDOT:PSSの導電性向上(体積抵抗値で1桁以上低下)に有効であることを見出した。 PEDOT:PSS、特殊なフェノール誘導体と高分子バインダーからなる混合スラリーをガラス面にコートした乾燥膜は表面抵抗150Ω/□、光線透過率88%を示し、本処方が透明導電膜材料として有望であることが判明した。今後はフェノール誘導体の化学構造等と導電性向上効果との関係を詳細に検討し、最適なフェノール誘導体及び作用機構を明確にすると同時に、複合体の導電性及び透明性向上を目指し、種々の極細セルロースナノファイバーの添加効果についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
達成度は80%で、その理由は以下のごとくである。 GO類似体である特殊フェノール誘導体がPEDOT:PSS導電性高分子の導電性向上に有効であることを見出し、PEDOT:PSS/フェノール誘導体/高分子バインダー系スラリーからITO膜並みの透明導電性(表面抵抗150Ω/□、光線透過率88%)を有する薄膜を得、当初の目標を達成しつつある。 なお、GOによる導電性高分子の導電性向上には温度150~200℃での熱処理が有効であることを明らかにしたが、その作用機構については未解明であり、来期も検討を加える。
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今後の研究の推進方策 |
導電性高分子PEDOT:PSS/特殊フェノール化合物/高分子バインダー系で表面抵抗150Ω/□、光線透過率90%以上を達成すべく、最適なフェノール誘導体及び高分子バインダー種を明確にし、可能ならば、随時外部求評を行う。このとき特殊フェノール化合物のPEDOT:PSSの導電性向上作用機構についても明らかにする。さらに、一層の導電性向上を目指し、他の添加物、例えば極細セルロースナノファイバーの添加効果について検討する。 また、今年度に引き続き、来年度も導電性高分子/GO複合体の熱処理による導電性向上作用機構を分光学的手法により検討する。
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