①導電性高分子(ポリアニリン(PANI:DBSA)、ポリチオフェン(PEDOT:PSS)、スルホン化ポリアニリン(PAS))は現行のスズドープ酸化インジウム(ITO)に代わる次世代フレキシブル透明導電材として注目されているが、導電性に劣る。そのため、筆者は酸化グラフェン(GO)との複合化による導電性高分子の導電性向上を検討してきた。上記各導電性高分子とGOとの複合体(PANI:DBSA/GO、PEDOT:PSS/GO、PAS/GO)を150~170℃、1時間ほど加熱処理すると各々単独時に比して導電性が著しく向上することを見出し、今年度はその導電性向上機構につきUV-VIS、IR、ラマンスペクトルそしてXPS等を用いて詳細に検討した。その結果、各複合体の導電性向上はドーパント機能を有する強酸性物質(スルホン酸化合物またはスルホン酸基)によりGOの熱還元体であるrGOへの変化、すなわちC-O結合からCsp2(二重結合)への変化が促進され、GO自身がグラフェン構造により変化した結果、導電性が向上したと考えられた。このとき導電性高分子とGOあるいはrGOとの間に想定されるπーπ電子移動に基づく導電性向上の寄与は確認できなかった。 ②これまでに、PEDOT:PSSに特殊フェノール化合物を重量比1:0.5で添加すると導電性が3桁向上することを確認したが、今年度は実用化を目指して透明フィルム用導電性コーティング材の作製を試み、フィルムメーカーに外部求評を行った。その結果、透明導電性は表面抵抗150Ω/□、全光線透過率88%でITO並以上を確認できたが、高温高湿度下での耐久性が不足で、今後改善が必要となった。今後は最適フェノール種の見直しと同時に、耐久性の改善に努める。
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