研究課題/領域番号 |
25420728
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋田 昌樹 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50291034)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ナノ構造体 / 結晶性 / フェムト秒レーザー / レーザー加工 |
研究概要 |
機能性金属ナノ材料の設計製作では、材料の「構造、結晶、組成」が重要な役割を果たしていることが知られている。本課題ではフェムト秒レーザー加工により金属表面上に人工的に微細な「構造体」を形成し、その「結晶」を制御するための実証実験を種々の金属に対して行い結晶制御ナノ構造体形成の基盤構築を目指している。本年度は、まず鏡面研磨した金属(白金、タングステン、モリブデン、銅、チタン)及び半導体(シリコン、シリコンカーバイト)に対してフェムト秒レーザーを照射し、レーザー波長の1/10程度の大きさのナノ構造体が照射領域内に均一に形成できるレーザー照射条件(フルーエンス、レーザー波長、金属種、基板温度)を明らかにした。またナノ構造体のサイズ分布についてもデータを収集し材料の融点がレーザー照射条件を決める要因の一つであることを明らかにした。特にレーザー照射条件を最適にすることで照射される固体表面に均一にナノ構造体が形成されることを見出した点は予想を超える成果である。さらに形成されるナノ構造体を切断加工し結晶性観察する予定であったが貴重なナノ構造体サンプルとして詳細観察するため長期保管することとした。結晶観察のためのナノ構造体の切断作業は行なわず、ナノ構造体の形成されたレーザー照条件及びレーザー加工特性(アブレーション率)からSRIMコードを用い、その結晶構造変化(多結晶、非晶質)について考察した。ナノ構造体のできる形成機構については電磁場計算ソフト(Poynting)及びFISCOF2(Particle in Cellシミュレーションコード)により明らかにした。ナノ構造体の形成機構には、レーザーパルスの立ち上がり部分で形成される低密度プラズマが重要な役割を果していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、フェムト秒レーザー加工によるナノ構造体の最適照射条件とその結晶構造の関係を明らかすることが達成目標であった。そのためナノ構造体の結晶性測定を計画していたが、レーザー波長の約1/10程度の大きさのナノ構造体が均一に表面に形成さする予想以上の成果を得たため、ナノ構造体の大きさとその密度について詳細を調べる研究を優先し種々の金属においても類似したナノ構造体が形成されることを見出した。特に、金属のみならず半導体材料についても微小なナノ構造体が均一に形成されることから短パルスレーザーと固体との相互作用特有の現象であることを示唆するものであり、ナノ材料のサイズと密度を制御するうえで極めて有益なデータが取得された。多少の計画変更があったものの、予想以上の成果を含む結果を得ており、概ね順調に遂行している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、初年度に実施予定であったナノ構造体の結晶性観察を行なう。とくに表面に均一に形成されるナノ構造体について電子顕微鏡観察により結晶性を明らかにするとともに表面にナノ構造体が形成されていない平坦な材料についても切断観察し、その表面下部の空洞や構造体の有無についても調査する予定である。表面下部に微細な構造体が形成されていた場合には、その結晶性も合わせて観察する予定である。本年度は、研究実施計画に示している下記の2課題についても予定とおり実施する。 1.非晶質化した金属ナノ構造体の組成分析 2.フェムト秒レーザー加工により金属表面から放出する荷電粒子のエネルギー測定 2課題の成果を踏まえナノ構造体の形成機構及び結晶性制御機構のための物理モデルの立案と検証を行なう予定である。
|