前年度に引き続き,アルミニウム蒸着膜を仲立ちとした重フリントガラスFD110の陽極接合を行った.FD110ガラスの継手は接合を仲立ちするアルミニウムの酸化によって界面の透明化は生じるものの,継手自体が黒く着色して光透過率が上がりにくい.そこで,FD110ガラスのみに電圧を加えたところ,流れた電流量に応じてガラスの着色が生じることがわかった.そこで仲立ちのアルミニウム層の厚さを最適化して,光透過率約50%の継手を得ることができた.ソーダライムガラスとバリウムフリントガラスBAF11についてもアルミニウム層を仲立ちとした接合を行い,ソーダライムガラスでは光透過率約70%,BAF11でも反対側を透視できる継手を得ることができた. 多くのガラスと高い陽極接合性を持つことがわかったチタンを仲立ちとして,ソーダライムガラスや,FD110ガラス他数種類の光学ガラスの陽極接合を行った.チタン層の厚みを最適化することで,ソーダライムガラス,FD110ガラスで光透過率がそれぞれ80%,70%を超える継手が,またフリントガラスSFL6,バリウムフリントガラスBAF11,クラウンガラスBK7でも高い光透過率を持つ継手が得られた.このようにして,当初の研究の目的である陽極接合による接合界面が透明化するガラス同士の継手の作成の可能性を実証した. ソーダライムガラス,FD110ガラス同士の陽極接合界面のTEMによる微細組織観察を行い,アルミニウム,チタンをを仲立ちとした継手で,それぞれγ-Al2O3とルチル型のTiO2が界面に生成しており,光透過率の高い継手界面では酸化によって仲立ちの金属層がほぼ消尽していることを微細組織から立証した. 接合条件を系統的に変えたソーダライムガラスの継手界面の強度評価をビッカース硬さ試験によって行い,強固な継手界面が形成されていることを明らかにした.
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