研究課題/領域番号 |
25420730
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
手塚 美彦 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (80236976)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / ポリビニルアルコール / ポリチオフェン / コンポジットフィルム / ポリマーハイブリッド |
研究概要 |
細胞培養や細胞マニュピュレーションに応用できる新素材の開発を最終的な研究目的とし,初年度はハイドロゲル内部に導電性ポリマーのネットワークを形成する手法の確立を研究実施計画に挙げた.ポリビニルアルコール(PVA)は代表的な水溶性ポリマーであり,容易に架橋してハイドロゲルを形成することから,このPVAフィルム内部にポリチオフェン(PT)のネットワークを形成する手法を検討した. ケン化度の異なる二種類のPVA水溶液をそれぞれITOガラス上にスピンコートし,水分が完全に揮発する前に急冷し,真空凍結乾燥した.このようにして作製したPVAコートITOガラスを作用電極としてチオフェンを電解重合したところ,高ケン化度PVAではPTの析出が部分的にしか起こらず全体的に不均一であったのに対し,低ケン化度PVAではほぼ均一にPTが析出した.高ケン化度PVAは凝集しやすく,スピンコートした際に絶縁性の凝集体がITO表面を覆い,その領域でのチオフェンの電解重合を妨げたのに対し,低ケン化度PVAでは大きな凝集体は形成されず,凍結乾燥によってITO表面に十分な空間をもつ多孔質なPVAフィルムが形成されたと考えられる.この低ケン化度PVA/PT複合膜を水に浸漬してPVAを除去したところ,残ったPTフィルムの表面には直径1 μm以下の多数の孔が観測された.このマクロポーラスPTフィルムは電気化学的に活性であり,印加電位に依存した可逆的な吸収スペクトルの変化を示した. 電気化学的に活性であるという導電性ポリマーの特徴を生かすためには,導電性ポリマーがハイドロゲル内部に単純に分散しているのではなく,ネットワークを形成して基板電極と電気的に接触している必要がある.凍結乾燥によって水溶性ポリマーやハイドロゲルを多孔質化し,その内部に電解重合により導電性ポリマーを成長させる手法はこの目的に合致している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の「研究計画・方法」では,平成26年度の前半までに導電体ネットワーク内包刺激応答性ハイドロゲルの作製方法を確立し,目的とする機械的強度と電気伝導度を有するハイドロゲルの形成条件を決定することになっていた.平成25年度の段階で,ハイドロゲルと導電性ポリマーの複合フィルムの作製法を一つ確立できたことから,研究は当初の計画通りに進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の「研究計画・方法」に従い,平成26年度の前半までに導電体ネットワーク内包刺激応答性ハイドロゲルの作製方法を確立し,目的とする機械的強度と電気伝導度を有するハイドロゲルの形成条件を決定する.また生体材料への実際の応用を念頭に,ハイドロゲルを構成する親水性ポリマーと導電体ネットワークを形成する導電性ポリマーの両者について,タンパク質吸着特性や細胞毒性についての評価を行う. 平成26年度の後半からは,この新規材料の生物・医療分野への応用を目指したデバイスの作製を行う.作製するデバイスとしては申請時と変わらず「マイクロアクチュエータ」と「刺激応答性培養基板」の二種類である.
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬Poly(3-hexylthiophene-2 5-diyl)(1本),KRS5結晶プリズム再研磨加工(1件),BNCケーブル(3本)については,3月に納品となり,支払いが完了していないため. 試薬Poly(3-hexylthiophene-2 5-diyl)(1本),KRS5結晶プリズム再研磨加工(1件),BNCケーブル(3本)については,4月に支払いが完了する予定である.
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