まず、最終年度の代表的な研究成果を記す。酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体薄膜/金属Ti複合体が、Liイオン電池用の電極として作動することと、有機分子の表面修飾により小さい水付着力の超撥水性を示すことを確認した。多機能分離膜への応用を考えてTiメッシュ表面上でのリン酸チタン薄膜の合成を試み、Ti板表面上での合成とは異なる条件が必要ではあるが、メッシュ表面上にもリン酸チタン薄膜を形成できることを確認した。さらに、5種類の結晶構造及び形態が異なるリン酸チタンナノ粒子のLiイオン電池特性を調べ、ナノファイバー粒子が容量とサイクル特性の観点から優れた特性を示すことを明らかにした。また、リン酸チタンナノ粒子を前駆体として生成する酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体粒子のLiイオン電池特性とNaイオン電池特性を明らかにした。 次に、研究期間全体を通じて得られた研究成果の中でも特に重要な成果を記す。Tiを原料として、Ti表面上に5種類のリン酸チタン薄膜を形成することに成功し、反応機構を明らかにした。これらの薄膜は超親水性を示し、有機分子の表面修飾や光照射により水の付着力や接触角(超撥水性から親水性まで)を制御できた。また、薄膜合成に派生して、リン酸チタンナノ粒子の合成と形態制御にも成功した。さらに、リン酸チタンの粒子・薄膜を、それらの形態を保持したまま高比表面積の酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体の粒子・薄膜に変換する方法を確立し、それらの水溶液中での有機分子除去能力や電池特性や濡れ性を明らかにした。特に、酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体粒子は、容量とサイクル特性とレート特性の観点から、優れたLiイオン電池及びNaイオン電池の負極材料として応用できることを明らかにし、これらの優れた特性がナノ及びマイクロサイズでの形態と結晶構造に起因することを明らかにした。
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