研究課題/領域番号 |
25420737
|
研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
高橋 政志 東京都市大学, 工学部, 教授 (90328930)
|
研究分担者 |
江場 宏美 東京都市大学, 工学部, 准教授 (90354175)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 二酸化チタン薄膜 / 相分離LB膜 / シリカ/チタニア複合粒子 / 蒸発誘起自己組織化 / 色素増感太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究では様々な有機分子集合体を反応マトリックスとして用いることで複合酸化チタン材料を調製するプロセスの開発を目的としている。前年度に引き続き、H26年度も「長鎖アルキルアミンベースの混合LB膜」および「有機シラン化合物が形成するミセル」をテンプレートとして利用するチタニア材料調製法の開発についての課題を継続するとともに、「蒸発誘起自己組織化させたプルロニック系高分子材料をテンプレート利用した多孔性チタニア層の作製」についても検討を行った。 「長鎖アルキルアミンベースの混合LB膜」については膜物質をオクタデシルアミン/パーフルオロアルコールの混合系に絞り、二次元面内の相分離状態を確認するためLB膜(1層累積膜)を作製してコンタクトモードおよびフリクションモードによるAFM観察を行った。テンプレートに用いたLB膜とこれより得られるチタニア膜の結果を比較することによって、LB膜の相分離構造とチタニア薄膜の二次元パターニングとの関係を明らかにした。 「有機シラン化合物が形成するミセル」については、昨年度実施できなかったTEM観察を行ない、試料粒子の微細構造の確認を行った。さらに、水熱処理プロセスを追加した場合のチタニアの結晶性への影響を調べ、シリカ成分を除去した試料については光触媒活性の評価を行った。 「蒸発誘起自己組織化させたプルロニック系高分子材料」は多孔性チタニア薄膜を得るためのマトリックス材料として用い、その調製プロセスと得られる膜構造の検討を行った。高分子材料には両親媒性トリブロック共重合体のP123を用い、チタンアルコキシドとともにエタノール溶液から基板上に塗布することで複合化膜を作製した。焼成処理後の薄膜は色素増感太陽電池の作用極に適用してセル性能の評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から継続して取り組んだ2件の課題に関しては研究を発展させることができ、以下に示す有用な知見が得られた。 「長鎖アルキルアミンベースの混合LB膜」において、表面圧-面積等温線やAFM測定から水面上の混合単分子膜の示す相分離構造がLB膜に影響することが示された。相分離によってできる長鎖アミンのドメインは幅数十nmのひも状で、従来の類似の報告例よりも大分サイズが小さい。このテンプレートからはドメイン構造を反映した厚さ0.4 nmのチタニア薄膜が得られ、これより鋳型の相分離構造の制御によってチタニア膜のパターン形成が可能であることが確認された。これらの成果は日本化学会春季年会にて発表した。 「有機シラン化合物が形成するミセル」に関しては、TEM観察が可能となり大きく進展した。調製した試料中には約9 nmの単結晶チタニア粒子が集合していることが認められ、シリカとの複合化によりテンプレートサイズに依存して粒子成長が抑制されたことがうかがえる。また、180℃の水熱処理によってチタニアの結晶性が向上し、シリカ除去後はメチレンブルーの分解に対して触媒活性を示すことが確認できた。 今年度から着手した課題の「蒸発誘起自己組織化高分子をテンプレート利用した多孔性チタニア層の作製」では、調製したメソポーラスチタニア薄膜を色素増感太陽電池の作用極に用いると同じ厚さのチタニア粒子(P25)薄膜を用いた場合より高いセル性能を示すことが分かった。しかしながら、蒸発誘起自己組織化膜やこれより得られるチタニア薄膜は微細構造に関して不明な点が多く、今後も調製法や測定法を工夫して探索を継続する予定である。なお、多孔性チタニア膜の色素増感太陽電池への適用性を検討するため、「陽極酸化法で作製したチタニアナノチューブを使った色素増感太陽電池」についても並行して研究しており、成果をCSJ化学フェスタや日本化学会春季年会などで発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究課題の集大成として、平成27年度はすでに着手している3つの課題のさらなる深化と完結をはかる。具体的には、様々な条件下で作製した異なる構造のテンプレートを用いてチタニアの薄膜および微粒子試料を調製し、テンプレートのモルフォロジーが及ぼす影響を探索することでチタニア材料の構造制御に関する知見を得る。さらに、当初研究計画にあげた項目でまだ実施していない課題、「ジアルキルアンモニウム塩のベシクルをテンプレートとした中空構造酸化チタン」および「アミノ基を有する自己組織化膜を下地に用いた酸化チタンコーティングプロセス」に着手する。研究の推進にあたり担当学生を1名増員し、並行してこれらの研究課題の実施にあたることとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の執行額は概ね当初申請の支出計画内に収まっている。前年度の未使用予算額は当初AFMのカンチレバーの購入に充てる予定であったが、予算と合わなかったことから購入を見送っており、その額が残る形となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
チタニア材料調製のためのテンプレートとしてベシクルやエマルションの利用も検討するため、繰越金はホモジナイザーの購入に充てる計画である。
|