研究課題/領域番号 |
25420738
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
坂 えり子 名城大学, 理工学部, 教授 (20181042)
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研究分担者 |
池邉 由美子 名城大学, 理工学部, 助教 (50553822)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロトン導電性セラミックス / Ni-BZOサーメット / 水素 |
研究実績の概要 |
燃料電池発電のより広い普及には、Ptに替わる安価な電極材を用いた高性能な燃料電池の開発が望まれる。SOFCは700~1000℃の高温での作動が可能であることから、触媒活性に有する安価なNiを燃料極材料に用いた研究を進めてきた。プロトン導電性を有する電解質材料の中でも高い電気伝導率を示し、化学的安定性に優れるBaZr0.91Y0.08Co0.01O3-δ(BZO)とNiOを混合したNiO/BZOサーメットを作製し、熱処理等の作製条件が試料の焼結性と電気伝導特性に及ぼす影響を調べた。試料の母材粉末は、金属酸化物及び炭酸塩の試薬を用い、BaZrO3にYおよびCoを添加し化学両論組成がBaZr0.91Y0.08Co0.01O3-δとなるように計量し、遊星型ボールミルを用いて十分な粉砕・混合した後に、1200℃大気中で仮焼成し、これをBZO仮焼粉末とする。NiOとBZO仮焼粉末の混合比を変えた粉末を200MPaの一軸加圧および静水圧プレス(CIP)を施してバルク状に成型し、1200℃~1400℃大気中で本焼成した。 NiO/BZOサーメットを作製する際にNiOとBZO粉末の混合の割合と熱処理温度など、試料の作製条件が焼結性に及ぼす影響を調べた結果、以下のような結論を得た。①NiOの混合割合がNiO:BZO=5:5の試料は1300℃以上で熱処理した後、試料内部にNiOが凝集している様子が観察された。②NiOの混合割合が高いNiO:BZO=8:2の試料は、1200℃で焼成した場合でも母材粉末であるBZO粒子の粒成長が顕著であり、NiO粒子が均一に分散していた。また、この試料の開気孔率は高く約29%であった。③電気伝導特性の評価条件と同一の1%H2+99%Ar雰囲気中においては、NiOの還元反応は335℃から始まり880℃付近でほぼ終了、Niの単相となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間に実施予定の研究内容は、プロトン導電性を示すSrZrO3系,BaCeO3系,CaZrO3系をはじめとする複数の酸化物セラミックスの個々の電気伝導性および材料としての安定性を調べてきた実験結果をもとに,これら固体電解質の母材粉末の作製条件,複合化のための傾斜勾配,接合条件を系統的に調べ,化学的安定性を考慮した低価格・長寿命の電解質材料および電極材の作製を目指すものであり,研究を通して明らかにしたいことは,①母材粉末の作製条件が電解質材料の結晶成長,粒界抵抗に起因する電伝導特性におよぼす影響,②水素以外のガスを含む雰囲気中での電解質材料の安定性を調べ,電気伝導性およびプロトン輸率の高い複合材料,傾斜材料を作製すること,③電解質材料の複合化および接合条件を検討して,界面反応や接着性の評価から,安価な電解質材料を創生することである. 上記の内容について、①母材粉末の作製条件の確立については、BZO,SZOを母材とするプロトン導電性材料について調べた。また、②多様なガス雰囲気中での電解質の化学的安定性とプロトン伝導性の向上を兼ね備えた電解質材料の作製と③化学的安定性を向上させるための保護膜および電解質材料と電極材の接合条件については現在実験を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画は、上記に示した水素以外のガスを含む雰囲気中での電解質材料の安定性を調べ,電気伝導性およびプロトン輸率の高い複合材料,傾斜材料を作製することおよび電解質材料の複合化および接合条件を検討して,界面反応や接着性の評価から,安価な電解質材料を創生することを継続し、中でも安価な電極材の特性向上のため、電解質材料BZOとNiOからなるNi/BZOサーメットについて、これまでの実験成果を基に、作製した試料の電気的特性を評価し、良好な特性を持つ燃料極材料と電解質の接合体を作製すること、また、その接合体の燃料電池セルとしての特性を評価する計画である。良好な接合性を得られる接合法とその接合試料の評価方法は具多的に、①接合法の検討 i) 燃料極基板に電解質材料を懸濁噴霧するスプレーコート法, ii) 燃料極基板にスラリーの電解質材料を塗布するスクリーンプリント法を導入する。また、②接合体試料の特性及び電池性能の評価 i) 接合体に流すガス濃度を変化させたときの起電力の変化からキャリアの特定を評価するイオン輸率の測定を行い、さらにii) 接合体試料に電流を流したときの起電力を測定する電流-電圧特性の評価から燃料電池セルの性能を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とする消耗品の購入には不足のため、次年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度予算と合わせて試薬の購入に充てる予定である。
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