各種輸送機器などへの適用が進められているアルミニウム合金の摩擦攪拌接合(FSW)継手について、ピーニング技術による疲労信頼性向上をはかるとともに、X線CTや放射光ラミノグラフィによって疲労き裂を非破壊的に可視化する手法を確立し、疲労破壊メカニズムを解明しようとする研究である。得られた研究成果の概要を以下に示す。 ①まず放射光ラミノグラフィによる疲労き裂可視化技術を確立した。この技術を利用して、A6061共材FSW継手やA6061/A2024異材FSW継手を対象に、摩擦攪拌領域を進展する疲労き裂の成長挙動を調査した。疲労き裂は三次元的に複雑に屈曲しながら成長するものの、荷重軸方向へ投影すると綺麗な半楕円形状を維持していることを明らかとした。き裂進展速度が母材のき裂進展速度に比べて加速していることを、破壊力学的手法により明らかとした。異材FSW継手については摩擦攪拌組織と疲労き裂の同時可視化に成功し、本手法が学術的に非常に有用な手法となりうる事を示した。 ②ショットピーニング(SP)ならびにレーザピーニング(LP)をA6061共材FSW継手に適用し、いずれの処理によっても疲労強度を母材以上に改善できる事を明らかとした。しかし、処理方法によってき裂の発生挙動に違いを生じ、寿命特性の改善効果が異なることを明かとした。同一の処理条件でA6061/A2024 の異材FSW 継手にLP処理を適用すると、疲労特性が改善されない事を明らかとした。これは、LP 処理を施すことによって得られる正の因子(組織硬さの向上,圧縮残留応力の付与)よりも負の因子(表面粗さ増加)が大きく、特にA6061側でこの傾向が顕著となることがFSW継手全体の疲労強度低下の原因であることを明らかとした。
|