研究概要 |
本研究では、空気中のガンマ線照射により誘発されるパラジウム、白金などの貴金属の酸化物の形成過程の解明を目的に、種々の雰囲気でガンマ線照射した貴金属薄膜の深さ方向の組成をイオンビーム分析法等により評価している。本年度は、ガンマ線照射用の薄膜試料の作製を目的に蒸着用基板加熱ステージを既存のスパッタリング装置に導入し、石英、サファイア単結晶の基板上に成膜中の基板温度をパラメータに厚さ100 nm程度のパラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)の薄膜を作製するとともに、ラザフォード後方散乱法、X線回折法を用いて結晶構造を評価した。その結果、Pd及びPtでは、基板温度600℃でサファイア(0001)基板上にPd(111), Pt(111)単結晶膜、石英基板上では、(111)に一軸配向した結晶配向膜を形成することができた。Auでは、サファイア(0001)及び石英基板表面に厚さ1 nmのPt層を緩和層として基板温度600℃で形成し、さらにAu膜を基板温度300℃で堆積することにより、Au(111)単結晶膜及び一軸結晶配向膜が形成することがわかった。次に作製したPd, Pt, Au薄膜に対して空気中でガンマ線(60Co線源:1.17, 1.33 MeV,高崎量子応用研究所・ガンマ線照射施設)照射を行い薄膜試料の酸化物形成を調べた。その結果、Pd薄膜では、照射量:2.5 MGyのガンマ線照射により表面から約10 nm の領域で酸化物が形成していることが確認できた。さらに照射量:5.5 MGyまで照射すると膜全体が酸化物に変化することが確認できた。一方、Pt, Au薄膜では、照射量:5.5 MGyまで照射を行っても、金属光沢を保ち膜表面には有意な酸化物層の形成は確認できなかった。以上の結果から貴金属の種類のより空気中のガンマ線照射により誘発される酸化物形成に違いがあることが明らかとなった。
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