本研究は自然界の周期的マイクロ構造をバイオテンプレートとする高周波帯域電磁波応答材料の作製を目的とし、1. 電磁波応答に適した構造をもつ藻類・バクテリア・植物組織の探索、2. 電気伝導体への転写プロセスの確立、3. 電気伝導性マイクロ構造体の配向制御、4. 電磁波応答特性の測定とサンプル形態の確立の4項目を通じて、生物・植物が自らつくりだす特異なマイクロ構造を電磁波応答材料として活用し、これまでのように人工的構造形成にエネルギーを傾注する研究手法から脱却した材料作製プロセスを提案するものである。 これまで、選定した電磁波応答に適したミクロ構造をもつ藍藻や珪藻を対象に微小金属構造体の作製プロセスの開発を主に行った。はじめに、選定藻類の純粋培養条件の探索と量産性の検討を行った。特に、コアミケイソウおよびタラシオシラなどの珪藻については、繁殖力の高い別種珪藻スケレトネマとの共生により非常に良好な増殖がみられることを明らかにした。鋳型藻類へのテンプレートプロセスはこれまで実績のある無電解めっきを用い、検討を行った。培養中の各種藻類は、その表面が細胞外膜やゼラチン質の保護膜に覆われているため、めっき核であるパラジウム微粒子の吸着が困難である問題点があった。そこで、グルタルアルデヒドを用いた細胞固定、次いで電荷付与のアルカリ前処理を施したところ、被覆率80 %程度の金属被覆層の作製に成功した。 得られた藻類を鋳型とした微小金属構造体の光学特性評価を目指し、顕微分光測定装置を新たに導入した。特に微細な内部構造を有する珪藻から得られた微小金属構造体については、珪藻胞紋由来の直径1ミクロン程度の1つのホールの透過率・反射率測定を行い、一般的な金属ホールアレイにみられる光の異常透過現象に類似のスペクトルパターンを得るに至り、新しい光学材料としての展開が期待できる結果となった。
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