平成27年度は,Al-11vol%Al3Ti複相材料への多軸鍛造(MDF)加工に伴うAl3Ti粒子破壊挙動に及ぼす粒子形状の影響について調査した.その際,板状Al3Ti粒子あるいは球状Al3Ti粒子が分散したAl-Al3Ti複相材料を用いている.なお,球状Al3Ti粒子を有するAl-Al3Ti複相材料は,Al粉末とガスアトマイズにて作製した球状Al3Ti粒子を放電プラズマ焼結することで作製した.Al3Ti粒子が板状粒子の場合,Al3Ti粒子は,MDF加工の加工回数に伴って破壊し,微細化した.一方,Al3Ti粒子が球状粒子の場合は,Al3Ti粒子の寸法はMDF加工に関わらず変化しない.これは,板状Al3Ti粒子の方が,母相のせん断変形を受けやすいためである.また,板状Al3Ti粒子を有する複相材料では,MDF加工に伴ってAl3Ti粒子に双晶変形が発生していた.さらに,そのAl3Ti粒子の双晶変形部近傍のAl母相には局所的な結晶方位回転が発生しており,Al3Ti粒子の双晶変形によってAl母相に応力集中が生じたことが分かる.以上の結果より,①Al-Al3Ti複相材料への巨大ひずみ加工に伴うAl3Ti粒子の破壊は板状Al3Ti粒子の方が生じやすい事および②Al3Ti粒子の破壊は双晶変形やその周囲のAl母相への応力集中を伴って生じる事が明らかとなった. これまでの成果から,板状の硬質粒子を有する複相材料に巨大ひずみ加工を施すと,板状粒子が破壊し,母相の塑性流動に従って分散することが分かった.また,複相材料のヤング率も硬質粒子分布に依存して決定する.この現象は,摩擦攪拌プロセスなど巨大ひずみ変形を伴う実用加工技術を複相材料に施しても発生する.よって,本研究成果は,巨大ひずみ変形を伴う加工を施した複相材料の組織制御技術として意義ある成果である.
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